勤務中に自席を離れたら「離席記録」を提出するように伝えられた――。上司からそんな指示を受けたとして、愛知県のメーカーに勤務する男性が会社に苦痛を訴えているというニュースが朝日新聞で報じられたのは3月18日のこと。
トイレの大か小か、それにかかった時間まで記載された離席記録の提出を求められたという男性。男性の職場の同僚からは「勤務中に頻繁かつ長時間の離席」を指摘する声が上がっていたのだという。
会社員の行動はどこまで会社に管理されるものなのか。このニュースを見て「他人事ではないと感じた」と語るのは、都内にある自動車メーカーのオフィスで勤務する石川芳樹さん(仮名・35)だ。ヘビースモーカーで、勤務中に頻繁に離席するという石川さんのケースを専門家の見解とともに検証してみる。
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都内のオフィスに勤務する石川さん。社内では、10年以上営業畑を中心に働いてきたという。そんな石川さんは昨年10月に営業部内で部署異動を経験。すると、その2か月後となる昨年12月に石川さんは「離席が多い」と上司から注意を受けたそう。上司からその原因として指摘されたのは石川さんの“喫煙癖”にあったんだとか。
当時のことを振り返り石川さんは「まさか、タバコで……」と頭を抱える。
入社以来、営業畑を中心に順調に営業成績を伸ばしてきたという石川さん。現在では、部下を5人も抱え主任としてチームを引っ張る立場だ。社内で出世街道を突き進んできた石川さんだが、喫煙歴10年超のヘビースモーカー。社内でも1日に20本入りのタバコ1箱を吸い切るほど。しかし、勤務態度は至って真面目で、営業成績も良好。ハラスメント行為などで周囲から注意されたことも過去にはないという。
そんな石川さんは昨年12月に上司から「タバコ休憩を取り過ぎだ」と注意される。注意直後は「確かに8時間労働1時間休憩の就業規則が社内にある以上、休憩時間の枠を越えるほどタバコを吸うのは問題かもしれない」と真面目に考えた石川さんですが、長年愛煙者として過ごしてきただけに、簡単にはタバコを止められない。
すると、今年の2月になり上司から再び「離席が多い」と注意を受けたという。石川さんはこのときには、上司から直近1か月間の離席回数と離席時間が記されたメモを手渡されたそう。その場でこれはマズいと思い「今後は気をつけます」と返答した石川さんですが、その1か月後に三度、上司から直近1か月間の離席回数と離席時間が記されたメモとともに勤務態度の改善を求められ「離席回数の多さが今後減らないのであれば、他部署への異動もあり得る」と異動案を突き付けられる。
よくよく上司の話を聞くと、タバコを吸わない一部の社員から、再三「石川さんはタバコ休憩を頻繁に取ってずるい」との声が総務部に寄せられているのだとか。
確かに勤務時間のうち20本ものタバコを吸えば、1本につき5分としておよそ1日に1時間40分をタバコ休憩に費やす計算だ。石川さんの残業時間は月に35時間ほどなので、石川さんが社内でタバコを吸わなければ、会社が石川さんに支払う残業代もほぼなくなる。また、職場でタバコを吸う人は少なくないが、1日1箱ものタバコを消費する社員は石川さんも含め片手で数えられるほどだ。
営業成績が部内で目立って低いわけではないので、タバコ休憩のための離席回数の多さだけを理由とした部署異動の提案に納得がいかない石川さんだが、会社はどこまで勤務中の社員の行動を管理できるものなのか。専門家が解説する。