■「ニッセイ基礎研究所」主席エコノミストの見解

 こうした中東情勢の影響はいつまで続くのか? 「ニッセイ基礎研究所」主席エコノミストの上野剛志氏は、今後の状況をこう予測する。

「トランプ大統領は原油高を嫌います。ベネズエラ攻撃や去年のイランの核施設攻撃の例を見ても、短期で戦闘を収束させるだろうと市場は見ていました。しかし、思いのほか戦闘が長期化しており、現時点では収束の見通しが立っていません。ドバイ原油価格は、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃が始まる前まで1バレル約70ドルでした。現在は1バレル150ドルを超えています。ここまで需給のバランスが崩れると、もはや適正価格かどうかよくわからない状況です」

 国内で使用する石油の9割以上を中東から輸入している日本にとって、原油価格高騰の影響は避けられない。とはいえ、現時点で日本が石油不足に陥っているわけではない。

「日本には国家備蓄と民間備蓄の2種類の石油備蓄があり、民間備蓄と国家備蓄の合計45日分の備蓄放出が決定しています。それを除いたとしても、200日分以上の石油が残っている。すぐさま、石油不足とはなりません」(前同)

 ただ、ホルムズ海峡の封鎖によって不足しかねないものがあるという。

「中東からの輸送が止まったことで、原油の精製過程で得られる石油製品の一種であるナフサ不足になっています。ナフサは需要の4割超を中東からの輸入に頼っている。今後、代替調達が進まなければ、プラスチックのように製造にナフサが欠かせない日用品の価格は大幅に上昇する可能性があります」(同)

 スーパーでは食品トレイやラベル、コンビニではテイクアウト商品を包装するのに使われているプラスチック。

「食材価格の高騰に加えて、プラスチック製品も高騰するとなれば、コンビニ弁当やスーパーのお惣菜のさらなる値上がりも予想されます」(前出の経済部記者)

 アメリカ・イスラエルとイランによる戦闘は、いまだ収束の兆しを見せていない。日本から1万キロ以上離れた海峡封鎖が、私たちの日常を変えようとしている。

上野剛志
ニッセイ基礎研究所 上席エコノミスト
京都大学経済学部卒業後、1998年に日本生命保険相互会社入社。企業融資審査業務に携わる。その後、日本経済研究センター、米シンクタンクThe Conference Boardへの派遣を経て、2009年よりニッセイ基礎研究所へ。内外経済の動向を踏まえ、為替をはじめ、金利、金融政策、コモディティなどを幅広く分析している。岐阜県出身。