相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
先日終わった大相撲春場所で、ファンの視線をクギ付けにしたのが、平幕・藤ノ川(前頭2枚目)の相撲だった。
176センチ、119キロの小兵ながら、キビキビとした相撲で2日目に横綱・大の里を撃破。翌日は横綱・豊昇龍を堂々と倒したのだから、あっぱれというしかない。
場所前には、春場所に対戦があることを見越して、大の里の所属する二所ノ関部屋へ出稽古に行って、手応えも感じた。その成果もあったのだろう。相撲に自信が満ちあふれている。
埼玉栄高在学中に初土俵を踏んだ藤ノ川は、大卒の大の里と相撲教習所通いが重なっていたことがある「ほぼ同期」。
年下(現在21歳)の藤ノ川のほうが「兄弟子」に当たるのだが、たとえ相手が横綱でも「負けたくない」という気持ちが強かったんだろうな。負けず嫌いが、顔つきにも出てるよね(笑)。
藤ノ川の父親は、元幕内の大碇という力士で、今は甲山親方として教習所などで厳しく指導にあたっている。最高位は前頭11枚目だったけど、実はオレも対戦を経験している。ガチンコで真面目なタイプだったから、親方になってからのほうが「いい仕事」をしているように見えるね。
それで藤ノ川には2人の弟(次男は幕下・碇潟)と妹がいたのだが、母は藤ノ川が幼い頃に亡くなった。その後、父親の甲山親方は、3兄弟を男手ひとつで、必死に育てた。食事の面なんか、相当、大変だったと思うよ。