■トキの取り乱しに“1度目”を思い出す声も

 サワ(円井)はトキ(高石)ら松野家と一緒に墓参りを終えて、トキと二人きりに。石段を登りながら「(ヘブンは)寂しいところが好きだったけん」(トキ)、「あの世でもサビシイ、サビシイってはしゃいじょるね」(サワ)などと雑談し、笑い合う。

 そして、会話が一区切りついたタイミングでサワは真剣な口調で「あっ。ねぇ……取り乱した?」と、トキに質問。トキは最初こそ「ううん。もう母親だけん。それに、最期があまりに静かで、あっけなくて。取り乱す暇がなかったいうか。取り乱せんかったというか」としみじみと話すも、次第に涙がこらえきれなくなり、「もう、ほんにあっけなくて。だけん、だけん……」と、顔をくしゃくしゃにして泣き始める。そんなトキをサワは優しく抱きしめ、「取り乱せちょる。よう取り乱せちょるよ」と支える――という展開。

 なぜ、サワはわざわざ「取り乱した?」と聞いたのか? それは、トキが18歳の頃、実の父・傳(堤真一/61)を亡くした際にも、似た出来事があったから(昨年10月17日放送回)。

 当時、傳の葬儀後にトキは家族に「ちょっと一人になりたい。一人になって取り乱したい」と外出。一人でいたところにサワがやってくる。トキはサワに「取り乱したいんだけど、取り乱し方が分からんの。教師目指しちょるけん、知っちょんだない?」と尋ね、サワが「いや、そげな。そもそも学校で取り乱し方……」と返すや否や、トキは声を上げて泣き崩れる。サワはトキを抱きしめ、「上手に取り乱せちょるよ……。上手、上手……」と、背中を優しく叩く――という場面があったのだ。

 傳の死以来、トキの2度目の“取り乱し”を優しく受け止めるサワに、視聴者は感謝をしているようだ。

《おサワありがとう……いつもおトキちゃんを取り乱させてあげてくれて…》
《おサワさんの「うまく取り乱せちょるよ」があのときと変わらずやさしくてやさしくて おトキさんが最後にちゃんと取り乱せてよかった》
《サワちゃんありがとう。トキが正しく取り乱せるのは、やっぱりサワちゃんの前だけ》
《ちゃんと取り乱したか聞いてくれるおサワちゃんありがとう。ちゃんとおトキちゃんを泣かせてくれてありがとう》

 多くの視聴者がトキに代わって感謝の言葉を伝えている感じだが、視聴者としても、サワの存在はありがたかったのではないだろうか。それというのも、今回のヘブンの最期はあまりにも穏やかで、葬式の描写などもなし。縁側の場面からすぐに墓参りのシーンへと移っていた。それは、ヘブンの死後、だいぶ時間が経ったということだろう。ヘブンが亡くなったのは秋だが、墓参りの場面では雪が降っていて、松野家の面々は穏やかにヘブンを偲んでいた。

 なので、トキ以外の登場人物たちは気持ちの整理をつけている感じだったが、今回サワが登場し、トキが押し殺していた感情をしっかりと引き出してあげた。それにより、視聴者もしっかりと“悲しむ”ことができたのではないだろうか。トキにとっても、そして『ばけばけ』視聴者にとっても、サワの存在は大きかったようだ――。

特撮・ドラマ・映画ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受け、平成ライダー、そして現在放送中の令和ライダーを筆頭に、特撮作品を愛するように。
特撮出身の俳優を追う過程で一般ドラマや映画の世界にも興味を抱くようになり、朝ドラを筆頭に旬なドラマ・映画は欠かさずチェック。エキストラとして作品に参加し、阿部サダヲ藤原竜也など一流の俳優陣の生の芝居に衝撃を受けることもしばしば。