かつて昭和のお茶の間では「そんな低俗な番組を見るのはやめなさい!」という怒号が飛び交っていた。ザ・ドリフターズのコントに腹を抱えて笑う子供に対し、親たちは眉をひそめながら「テレビばかり見ているとバカになるわよ」と説教を垂れたものである。

 ところが、当時の叱られていた子供が親となった令和の現在、今度は自分の子供にこう言い放つ。「そんなくだらないYouTubeなんて見るのはやめて、地上波を見なさい!」と──。

「キッズ向けYouTubeの隆盛ぶりは、確かに凄まじいものがあります。たとえば『はねまりちゃんねる』(655万=以下、カッコ内の数字はチャンネル登録者数)、『かんあきチャンネル』(413万)、『HIMAWARIちゃんねる』(394万)などは、いずれも家族や兄弟がワイワイ騒ぐ動画が中心。他にも『70cleam』(279万)のような人形寸劇や海外から発信する『KahoSei Channel from Canada』(184万)などジャンルは多岐に渡りますが、共通しているのは“素人感押し”という点です」(ITジャーナリスト)

 カメラワークや構成は単調。演者のトークも普通で、スター性もない。プロが制作する地上波テレビ番組と比べれば、あらゆる面でレベルに雲泥の差があるのは明白だ。それにもかかわらず、子供たちはこれらの動画に何時間も釘付けになる。

 この大人には理解不可能な現象について、若者文化に詳しい芝浦工業大学デザイン工学部教授の原田曜平氏は「比較対象がそもそも違う」と指摘する。

「子供たちにとって、YouTubeはテレビ番組の代替ではない。むしろ“友達と一緒に遊んでいる時間”の代わりなんですよ。子供たちは最初からコンテンツとしてのクオリティなんて求めていないんです」

 この問題は社会的な背景抜きでは語れないというのが原田氏の考えだ。『まいぜんシスターズ』(321万)、『カラフルピーチ』(236万)、『ちろぴの』(180万)といったゲーム実況系チャンネルを例に取りながら説明を続ける。

「昔は友達の家に集まってファミコンをやって、上手いプレイを横で見ながら“すげえな!”などと盛り上がっていましたよね。ところが今の子供たちには、そういった時間がない。Nintendo Switchで通信プレイできるといっても、やっぱりリアルで会うのとは勝手が違いますから。“くだらないけど、一緒にいると楽しい”疑似体験をYouTubeでしているんです。ゲーム実況が流行っているのは、そういうことなんですよ」(原田氏=以下同)

 確かに現在の子供は“放課後に友達の家へ集まってダラダラ過ごす”機会が激減している。そのことは厚生労働省の研究結果からも明らかだ。根底には少子化があり、習い事の増加や都市部では中学受験の加熱化も関係してくる。

「家族総出で出演したり、兄弟でわいわい騒ぐ動画が人気なのも同じ延長線上の話です。家族仲がいい。兄弟・姉妹がいる。友達と楽しそうにしている……それが子供たちには眩しく映るんですね。つまり見たいのは身近で自分の世界の延長にあるような関係性であって。作り込みが甘くて素人っぽいからこそ、そこに親近感を覚えているんですよ」。