■中毒性を生むのは刺激より惰性
では、この“中毒性”は意図的に設計されたものなのか? 派手な色使いや高い声など、子供を惹きつける要素は随所に見受けられるが……。
「強烈な刺激でハマるというより、なんとなく惰性で見続けてしまうという構造なんです。TikTokやInstagramとかYouTubeのショート動画と同じで、一つひとつの動画は大したことがなくても、気づくと何時間も経っている。この点は現代人の生活リズムに適応したコンテンツだとも言えますね」
さらに気がかりなのが“子供向け”を標榜しているわりに、生臭いトラブルが絶えないことだ。親同士が収益配分を巡って泥沼の争いを繰り広げた例も多く、ゲーム実況の中で情報商材をひそかに宣伝しているといった噂も絶えない。過去には女性芸能人が人気キッズYouTuberと不倫していると騒がれたこともあった。教育上、いかがなものなのか?
「事務所にも入っていない普通の人が急にお金を持つわけですから、そりゃ揉めますよね。普通の家庭でも、遺産が入ったら親族で争うってよくある話じゃないですか。素人YouTuberはちゃんとしたマネジメントもついていないし、弁護士が入って整理してくれるわけでもない。テレビ局と違って、厳重なコンプラチェックやファクトチェックもない。そこは今のプラットフォーム時代の危うさだと思います」
子供たちからキッズYouTubeを切り離したい親はどうするべきか。原田氏は「単に禁止するだけでは解決にならない」と神妙に語る。
「根本には子供の孤独がある。友達と過ごしたくて、YouTubeに居場所を求めているという現実がある。本気でこの問題を解決しようと思ったら、習い事を減らしてでも友達と遊ぶ時間を増やしたほうが本当はいいんです。でも、実際はなかなかそれも難しいですよね。今は共働き夫婦が多いので、子供との時間を作るのが大変なのもわかりますが、それでもなるべく一緒にNetflixやディズニープラスで良質な映画を一緒に鑑賞する。あるいは地上波を一緒に見る。友達との場を作れないなら、親が一部を担うしかないんです」
キッズYouTubeに夢中になる子供に腹を立てるよりも、結局はもっと子供と向き合うことが必要ということか。孤独を埋める装置としてのキッズYouTubeは時代の副産物と言えるのかもしれない。
原田曜平(はらだ・ようへい)
芝浦工業大学デザイン工学部教授。信州大学・特任教授。BSテレビ東京番組審議会委員。1977年、東京生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーに就任し、世界中で若者研究及び若者向けのマーケティングや商品開発を行った。13年「さとり世代」、14年「マイルドヤンキー」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「Z世代」を日本メディアに紹介し、流行語大賞トップ10に選出。著作に『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』 (光文社)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎)など。