発毛治療薬が登場してから約40年。はたして、「ハゲとの戦い」に終止符は打たれるのか――。

 脱毛症で抜けてしまった髪の毛は、諦めるしかないのか――これまでの常識を覆す発見が、日本の研究チームから発表された。

「今年の2月に発表された毛髪再生に必要な“第3の細胞”を発見したというニュースが世間で注目を集めているんです」(サイエンスライター)

 この研究成果は、理化学研究所と再生医療ベンチャーの「株式会社オーガンテック」の共同研究チームが発表したものなのだが、これが脱毛症治療の新たな手法として決定的なものになるのではないかと話題を集めているのだ。

 毛髪再生に必要な”第3の細胞”とは、いったい何か? これまでの発毛治療と何が違うのか? 研究を行ったオーガンテックの取締役CTO・小川美帆氏に話を聞いてみた。

「これまで、上皮細胞と毛乳頭細胞の2つの細胞によって髪の毛は作られているということが分かっていました。この2種類の細胞が組み合わさって、毛包原基という“髪の毛の種”ができ、そこから髪の毛が伸びていきます。弊社が2012年に証明したこの手法を用いて、体外で作り出した毛包原基をマウスの皮膚に移植すると、実際に毛が生えてきます。ただ、体外で毛を生やすまでには至っていませんでした」

 今回発見された“第3の細胞”は、髪の毛が伸びて抜けてまた生えてくるという“ヘアサイクル”に直接関わってくる細胞だ。

「ヘアサイクルには“ダウングロース”という現象が起こります。上皮細胞と毛乳頭細胞という“第1・第2の細胞”で作られた毛包原基から髪の毛が伸びるときに、髪の毛球部が皮膚の下に潜り込んでから毛が上に伸びるのですが、この動きを助けるのが“第3の細胞”。私たちはこの細胞を”ABM細胞”と名付けました」

 この細胞を発見したことにより、マウスの体外で毛を生やすことが可能になったのだそうだ。

「つまり、髪の毛を伸ばす細胞が発見されたことによって、体外で増やすことができるようになったんです。この発見は非常に画期的で、髪の毛の再生に関する基本的な部分は、研究し尽くしたと言ってもいいのではないかと、私たちは考えています」

 では、これまでの脱毛治療やAGA治療と何が違うのだろうか?

「薄毛になった部分は、完全に髪の毛がなくなったわけではなく、実は髪の毛が抜けた後に体毛のような細い毛が生えているんです。男性型脱毛症(AGA)とは、この太い髪の毛が体毛のような細い毛に生え変わってしまう現象のことを言います」(前同)

 髪の毛の成長サイクルが2年から7年ほどに対して、体毛は数週間~数か月で生え替わるのだという。従来の脱毛症治療は、この退化を抑えるための治療法だという。だが、
「ミノキシジルや酵素阻害薬など、現在の薬は髪の毛が体毛のようになっていく過程を止めるためのものなのですが、ミノキシジルは血流を促進して発毛を促すので、全身の毛が濃くなる可能性がありますし、酵素阻害薬は性機能低下の可能性があるとも言われています。どちらも最大のデメリットは、治療をやめると症状が進行してしまうことでしょう」(皮膚科勤務医)