■2030年頃までの実施を想定
髪の毛を移植するなら、すでに自毛の植毛治療が行われている。何か違いはあるのだろうか?
「植毛は、後頭部から髪の毛を採取し、頭頂部などの髪が薄くなった場所に移植する治療法です。あくまで引っ越しであって、髪の毛の本数自体は増えません。一方の第3の細胞を用いた治療は、髪の毛を採取するところまでは植毛と同じですが、採取した髪の毛を培養させてから移植する点が異なります。植毛では1本取れば1本しか増えませんが、それに対して、第3の細胞を用いた治療法は、確実に増やしてから移植するという治療が可能になるんです。そして増やした髪の毛は、一生涯抜けて生えてを繰り返すことになります」(前出の小川氏)
進行の抑制でも、引っ越しでもない。第3の細胞を用いた治療が画期的なのは、髪の毛を新しく増やすことができるからだ。さらに驚くべきは、その培養率だ。
「頭頂部の見た目が寂しくなった方は、3000本移植すれば見た目が元通りになると言われています。この手法を用いれば、髪の毛を100本、親指の爪の先ほどの小さな面積を採取して100倍まで増やします。必要な量だけの採取で済むので、患者負担も少なくて済みます」(前同)
主な原因は遺伝と言われる脱毛症。避けられない遺伝子を持つ人たちにとって、はるか先の実現だったとしても、今回の研究成果は希望に満ちた発見に違いない。
しかも、この治療が実現する日は、それほど遠くないというから大きな期待をしてしまう。
「現在考えている治療の進め方は、いくつか段階がありますが、まずはこの細胞だけを移植する方法、いわば細胞を使った育毛剤のような治療を、2027年の実施を目標にしています。次に、髪の毛の種を作って移植する方法、あるいは体の外で完全に髪の毛まで育ててから移植する方法については、2030年頃の実施を想定しています」(同)
脱毛症治療の歴史を大きく変えた研究が、あと数年で悩める人たちの元に届こうとしている。