WBC、センバツ甲子園、そしてプロ野球開幕。話題が尽きない野球界だが、その盛り上がりとは対照的に、野球人口が減り続けている。

「日本野球競技会の普及・振興委員会の調べによれば、日本の野球人口は、2007年に161万3156人だったのが2023年では93万9605人と、約67万人も減っているんです。特に小学生の学童の選手登録者数が大きく減少していることから、子供たちの“野球離れ”が危惧されています」(野球専門誌記者)

 国民的スポーツと言われる野球に今、何が起きているのか?

 2006年から2021年まで中日ドラゴンズに所属した元プロ野球選手で、現在「株式会社ATSH」で代表を務める藤井淳志氏は、こう話す。

「他スポーツの選択肢が増えた影響は大きいと思います。バスケットもプロリーグができましたし、サッカーやバレーボールなども含めて各競技にプロリーグがある。さらに、海外で活躍する日本人選手も増えている。子どもたちが憧れる選手がどの競技にもいるわけで、結果的に選択するスポーツが分散していく。野球がすべてという時代ではなくなった原因はそこにあると思います」

 実際にさまざまな種目において、世界で活躍する日本人選手は増えている。

「野球では大谷翔平(31)が注目されますが、バスケットボールではNBA『ロサンゼルス・レイカーズ』に所属する八村塁(28)、バレーボールではイタリア・セリエA『シル・サフェーティ・ペルージャ』に所属する石川祐希(30)が世界のトップで活躍しています。サッカーに至っては、もはや世界のトップチームに日本人がいても驚かれません。今回のWBCで、侍ジャパンが過去最多の8人のメジャーリーガーを擁して挑んだと話題になりましたが、2022年のカタールW杯では、サッカー日本代表は19人が海外組でした」(スポーツ紙記者)

 日本人選手の活躍によって世界に触れる機会が増えた今、野球部特有のノリや上下関係を閉鎖的なものに感じる若者もいる。

 サッカー部に所属するある男子高校生は、グラウンドで隣り合う野球部の練習風景を見ながら、こう話す。

「どのスポーツも試合中に声でプレーの指示を出しますが、野球部はプレーに関係なく声出しを求められることが多いですよね。それも大声でないと“やる気がない”って判断されちゃう。これって、評価軸がおかしいと思います」

 先輩とのコミュニケーションの取り方にも違和感があるという。

「僕らは先輩を“〜くん”と呼びますし、試合中は先輩でも呼び捨てにします。比較的、先輩との距離は近いです。ただ、野球部は校内で先輩を見かけた瞬間に挨拶をしなければならないと聞きました。野球部の友人が急に大声で挨拶をしたことがあったんですが、目の前に誰もいませんでした。廊下の奥を一瞬通り過ぎた先輩に向けて挨拶したそうです」(前同)

 こうした“昭和気質”のコミュニティが、令和の若者にはなじまないようだ。

 そしてもう一つ、競技人口を減らした要因に、“親の負担”が挙げられる。特に少年野球は親の負担が大きい。息子が野球をやっていたという50代の男性は、こう話す。

「練習試合で審判を頼まれることもあったんですが、私自身は野球を経験していません。ルールも複雑ですし、判定に文句を言われることもありました。子供たちのためとはいえ、あまりいい思い出ではありません」