■「野球はお金がかかる」親が敬遠しがち
試合や練習で土日が拘束され、当番制のお茶汲みなど、”野球漬け”の日々が続く。そうした負担が、子供よりも先に親が野球を敬遠する理由になっているようだ。
「子供がスポーツをやる以上、野球に限らず、どの競技でも親の協力は必要です。ただ、野球は昔からある競技なので、そうした問題点が早くから指摘されてきました。他の競技はその問題をあらかじめ知ったうえで仕組みを作ってきたので、結果として、野球だけが親の負担が大きいように見えてしまっているのかもしれません」(藤井氏)
とはいえ、最大の懸念は、“野球はお金がかかる”ということだ。
「道具も多いですし、道具を運ぶために余分に車を出さなければいけないケースもある。負担があると言われる理由は確かに分かります」(前同)
では、野球に対する親の熱量が下がっているのかというと、それは違うと藤井氏は言う。
「競技人口が減っている分、今野球をやらせている親御さんは、僕らのときよりも熱量が高い人が多いと感じます。なので、二極化が進んでいると考えたほうがいいでしょう。野球に対してかなり強い思いを持ってとことんやるか、まったくやらないか。間の層がなくなってきているような気がします」
藤井氏は、愛知県名古屋市で運営する野球スクールにて、小学生と中学生を指導している。これから野球を始めるために通う生徒もいるそうだが、基本的にはすでにチームに所属し、プロを目指すために通う生徒が多いという。
「甲子園の盛り上がりを見ればわかるように、野球はビッグコンテンツです。その反面、選手に対して過度に、タテの人間関係や礼儀正しさを求める風潮もあるように感じます。気軽に野球を楽しみたい人からすると、それがプレッシャーになっているのかもしれません」(前出のスポーツ紙記者)
世界の大舞台で、日本の野球選手はプレー以外の振る舞いも賞賛される。その礎を築いた日本の野球文化が、確かな力を秘めていることは間違いない。しかし、その文化が一部の玄人向けのスポーツというイメージを与えてしまい、野球の門戸を狭めてしまったのではないか。
熱中する道もあれば、気軽に楽しむ道もあるーーそうした幅がなければ、野球離れはさらに加速していくのかもしれない。
藤井淳志(ふじい・あつし)
元プロ野球選手、ATSH代表取締役
1981年愛知県生まれ。筑波大学卒業後、NTT西日本に入社し、2005年秋の日本選手権で準優勝。05年度大学生・社会人ドラフト会議で中日ドラゴンズから3位指名を受け入団。21年の引退まで外野手として活躍。同年よりATSH代表として地域とアスリートをつなぐ野球教室事業などを手掛ける。