テレビに勝つための巨額投資──NetflixによるWBC(ワールドベースボールクラシック)の独占配信はそう語られる。しかし、それはあくまでもテレビ局の立場から見たひとつの見方にすぎないようだ。WBCに150億円を投じたNetflixが戦う相手は「テレビではない」と芸能プロ幹部は断言する。

「Netflixは世界190か国以上で利用され、総会員数3億2500万人を誇る世界最大の動画配信サービスです。しかしながら、日本ではいまだトップに立てていません」(前同)

 同社は、2024年に日本の会員数が1000万人を突破したと公表している。しかし、その倍近い会員数を国内だけで抱える動画配信サービスがある。国内トップとなる約1970万人の会員数を持つAmazon Prime Videoだ。

「株式会社ICT総研が2025年4月にWebアンケートで実施した動画配信サービスの利用実態調査では、最も多く利用されていたのはAmazon Prime Videoでした。Netflixはその次に高い数字を出しましたが、利用率は36%です。66.2%だったAmazonに大きく離される結果となっています」(前同)

 Amazon Prime Videoは、Amazonの有料会員サービス「Prime会員」に付帯するサービスだ。月額600円(税込・以下同)という低価格でありながら、配送料無料、音楽、電子書籍まで利用することができる。一方、動画視聴のみのNetflixの最安プランである広告付きのスタンダードプランは月額890円。動画しか見ることができないNetflixと違いAmazonの有料会員サービス「Prime会員」は、加入者にとってメリットが大きいのだ。

 元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、「Netflixが150億円もの巨額を投資して日本国内でのWBCの放映権料を獲得した背景には、動画配信サービス業界で生き残るための戦略がある」と話す。

 鎮目氏が続ける。

「NetflixにとってWBCの独占配信が持つ意義は、新規加入者の獲得だけではありません。一大スポーツイベントの配信を行なうことで、“何かあったときにはNetflixならやるだろう”という期待感を持たせたかった。こうすることで、他の動画配信サービスとの差別化を図ったと考えられます」