■ラクダのコブは1つか2つか?

 同じ祖先から分かれて別種となった動物は他にも多い。動物園で見かける『ラクダ』といえば2つのコブがあるイメージだが、世界には1つしかコブを持たない種類も存在する。

「北アメリカ大陸で誕生した祖先から、中央アジア中心に生息地を広げたのが『フタコブラクダ』。対して、アフリカへ進出したのが『ヒトコブラクダ』ですが、家畜化が進んだために現在では野生下では絶滅している種です。ちなみに、南米に下った"コブのないラクダ"は『ラマ』として現存します」

 あの"コブ"の正体は脂肪。ヒトコブでもフタコブでも、その重量はおよそ50キロ。水や食料がない際のエネルギー源として使用する点は共通だ。では、コブの数が違う理由は?

「ゴビ砂漠など寒い地域で暮らすフタコブラクダはモサモサと毛が長く、脂肪や体温を分散させるためにフタコブに。アラビアなど、真上から強い太陽光が差す地域に生息するヒトコブラクダは短い体毛。背中に脂肪の山を高く1つにまとめておくことで、熱が体に伝わりにくくしたのではと考えられています。余談ですが、この2種が交配すると"1.5コブラクダ"が誕生するんですよ」

 1.5コブラクダ! 自然界の不思議は尽きない。

 生物としてまったく別のグループに属していても、住む場所と生活スタイルで姿が似て進化するパターンもある。路上でときたま遭遇する動物といえば――。下の写真、どちらが『アライグマ』でどちらが『タヌキ』か、見分けがつくだろうか。

どちらが『アライグマ』でどちらが『タヌキ』でしょう? ※画像/shutterstock

 正解は左がタヌキで右がアライグマ。一見するとそっくりな両者だが、種族は完全に異なる。

「森などの環境で夜行性として活動するうちに、進化の過程で姿が似てしまいましたが、よく見ると大きな違いがあります。生物を分類する際に"〇〇目〇〇科"と分けていくのですが、アライグマは食肉目アライグマ科。外来種の彼らですが、知能も高く、木登りも泳ぎも得意。食べ物を"洗う"ように触って確認するので、指先も長くて器用なんです」

 一方のタヌキはネコ目イヌ科――実はイヌの仲間なのだ。

「彼らはイヌ科動物の祖先に近く、まさに原始的なイヌの姿。物を掴めるような足の形をしていません」

 見分け方は簡単。尻尾の模様をチェックすればいい。

「輪のような白黒の模様があるのがアライグマ、ないのがタヌキと覚えておきましょう」

 尻尾を見ればひと目で分かる――。こうした知識を持っていれば、夜道で遭遇したときに慌てることもないし、何より動物園での楽しみ方が変わってくる。「似ているけど違う」動物たちを、自分の目で確かめてみたくなるはずだ。

「動物学とは、直接的に生活に関係しないからと一般の方は注目しない学問かもしれません。でも、特に野生動物との遭遇は一瞬ですから、ある程度の知識を持っていれば未知の生き物を新発見できるかもしれません。まずは、ぜひ動物園で生き物に興味をもっていただけたら嬉しいですね」

 似ている動物が存在する理由は、同じ祖先をもっているか、それとも環境に適応して進化したからか――。この知識を持って動物園に行けば、見慣れた動物たちの見え方がガラリと変わるはずだ。

今泉忠明(いまいずみ・ただあき)
1944年東京都生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。67年、国立科学博物館特別研究生、72年富士自然動物園協会研究員として哺乳類の調査等を行う。文部省(現・文部科学省)の国際生物学事業計画(IBP)調査、日本野生生物基金および環境庁(現・環境省)の委託により「イリオモテヤマネコの保護のための生態調査」に参加。トウホクノウサギやニホンカワウソの生態、富士山の動物相、トガリネズミをはじめとする小型哺乳類の生態、行動などを調査している。上野動物園の動物解説員を経て、「ねこの博物館」(静岡県伊東市)館長を務めていた。