■野球人生は40まで 残りはもっと長い
後半戦は調子を崩し、二軍降格や59打席連続無安打(プロ野球タイ記録)もありましたが、最終的には規定打席に到達し、24本塁打、64打点。ルーキーイヤーとしては立派な成績でした。
私はヒットが出なくても、テルをスタメンで使い続けてきました。とにかくモノが違うし、必ずや未来のタイガースを背負う逸材だと信じていたからです。
テルには、ああしろ、こうしろと、細かいことは言いませんでした。テルと接する際のキーワードは1つだけ。「カッコいいか、否か」。これこそテルにとって一番ピンとくる言葉だと思ったからです。
例えば、一塁までの全力疾走を怠ったときです。
「子供たちがさっきの姿を見て、テルのことをカッコいいと思うか? ホームランを打ってカッコいいと思われるなんて当たり前やな。でも、打てないときでもカッコいいと思われんと」
二軍に降格させたときもテルを呼んで、こう諭しました。
「二軍に行って、ふてくされてやるのもおまえやし、なにくそっと思って、前を見て一生懸命プレーするのもおまえやないか。どっちがカッコいいと思う?」
私はテルにグラウンドの内外で、どう振る舞うことがカッコいいのかを、自分で考え、人としても成長をしてほしかったんです。
プロ野球選手が現役でプレーできるのは、どう頑張っても40歳前後まで。
その後の人生は現役時代にどう考え、どう生きてきたかに左右されます。
昨季、テルはプロ5年目にして本塁打、打点の二冠王に輝き、MVPを獲得しました。それを可能にしたのは技術的な成長だけでなく、人としての成長だったはずです。
矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。