■FPの回答

――新入社員としては高給取りの部類に入る、額面給料28万円の前原さんでも毎月手元に残る金額は22万円ほどとなります。すると、現状では手元に振り込まれるお金の半分以上は家賃に消えてしまう計算です。家賃補助が1万円貰える会社ではありますが、前原さんは生活のどの辺を切り詰めて1人暮らしを送るべきなのでしょうか。生活の中でのポイントを教えて下さい。

「手取り22万円に対し家賃12万円は、かなり重い水準です。一般に家賃は手取りの3分の1以内、できれば25~30%が目安とされるため、今の(生活の)苦しさは本人の努力不足ではなく、住居費の設定が高いことが主因です。

 今の部屋に住み続けるなら、まず見直すべきは通信費、サブスク、外食頻度、コンビニ利用などの固定化しやすい支出です。特に通信費はプラン変更で月数千円、食費は平日ランチの工夫で月1万円前後改善する余地があります。次にサブスク。動画・音楽・有料アプリ・ジム・オンラインサービスを見直すだけで、毎月1万円近く節約できるケースがあります。ただし、節約効果が最も大きいのはやはり家賃で、2万円下げられれば生活は一気に安定します。節約は“我慢”よりも、固定費の再設計を優先すべきです」

――大手企業ということもあり、前原さんが働く会社では、夏2か月・冬3か月分のボーナスが払われます。ボーナスが満額支払われる2年目以降は金銭的にも多少楽になると思われます。そういった状況で、日常の中での楽しみや贅沢はどこまで金銭的に許容してもよいものなのでしょうか。遊行費は月にいくら使うことができ、月にどれくらいの金額を貯金に回すのが適切になのでしょうか。

「2年目以降は賞与が増えるため年収ベースでは改善しますが、6月から住民税の天引きが始まるので、月々の手取りが劇的に楽になるとは限りません。そのため、生活設計は“月給で回す日常”と“ボーナスで使うご褒美”を分けるのが基本です。

 家賃12万円を払う前提なら、遊興費は月2万円前後、多くても2万5000円までが無理のないラインでしょう。旅行や推し活遠征、ちょっと高めの買い物はボーナスから出す形が安全です。貯金は最低でも月1万~2万円を先取りで確保したいところです。ボーナスは半分を貯蓄、2割を投資、2割をご褒美、1割を臨時支出に振り分けると、楽しみを持ちながらも家計が崩れにくくなります」

――前原さんは少しでも金銭的な余裕を得るために国が推奨するNISAなど、若手会社員の間でも流行っている資産形成を行なうべきなのでしょうか。一方で、将来を不安視して無理に資産形成を行なった結果、“NISA貧乏”に陥る若者も少なくありません。制度を活用する際の注意点を教えてください。

「NISAは有利な制度ですが、家賃負担が重い若手会社員にとって大切なのは投資を始めることより生活防衛資金を先に作ることです。前原さんのようなケースでは、まず普通預金で50万~80万円程度の現金を確保し、そのうえで少額から積み立てるのが安全です。

 新入社員はまだ生活基盤が固まっておらず、更新料、引っ越し関連費、パソコンや家電の買い替え、急な帰省、資格取得費など、まとまった支出が発生しやすいからです。2年目6月からは住民税も始まるため、1年目のうちから無理に月3万、5万円と積み立てると、いわゆるNISA貧乏になりかねません。

“せっかくだから非課税枠を使い切ろう”とボーナスをほぼ全額投資に回してしまうのも危険です。始めるなら月5000円~1万円程度の少額で十分です。商品も個別株や話題先行型ではなく、つみたて投資枠で低コストの分散型インデックスファンドを選ぶのが基本です。NISAは“余裕資金で、長く続ける”ことが何より重要です。

税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏 ※提供画像

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://www.316459.com/