■CFPの回答

――額面の給料は上がったものの、社会人2年目となり住民税が加算されたことで手取りの給料が減った。2年目の会社員はどのような点を意識して生活するべきなのでしょうか。家計の支出を減らす際に注意すべき点を教えて下さい。

「新卒2年目の6月に“手取りが減った”と驚く人は本当に多いのですが、これは会社に給料を下げられたわけではなく、前年の所得に対する住民税の天引きが始まるためです。

 1年目は大学を卒業して、自由に使える大きな金額が手に入り、また住民税の負担がほぼないケースが多いぶん、どうしてもこのくらい使っても大丈夫という感覚が身についてしまいます。ところが2年目に入ると、その感覚のままでは家計が急に苦しくなります。ここで大切なのは、額面ではなく、住民税が差し引かれた後の手取り額を基準に暮らしを組み直すことです。

 見直しの優先順位としては、日々のカフェ代を削る前に、通信費、サブスク、保険料といった固定費から手を付けるべきでしょう。クレジットカードの利用明細に覚えていない支出はないでしょうか? 小さな節約を積み上げるより、毎月自動で出ていく支出を抑えたほうが効果は大きいからです。

 さらに、貯蓄や投資は余ったらするではなく、“給料日に先に分ける”発想に切り替えたいですね。2年目は、社会人として初めて手取りベースで家計を回すことを覚える時期だと考えるべきです。

――NISAのような資産形成制度が若手会社員の間でも流行っています。吉田さんのような人が活用する際の注意点を教えてください。

「NISAは、いまや若い会社員のあいだでも当たり前のように話題にのぼる制度ですが、ここで一度立ち止まって確認したいのは、NISAはお得な制度ではあっても、安全な制度ではないという点です。1800万円の投資額まで非課税というメリットはたしかに大きい一方で、投資である以上、元本保証はありません。緊急でお金が必要になった時に含み損が生じているかもしれません。

 優先すべきは、急な出費や体調不良、転職などにも備えられる生活防衛資金を確保すること。そのうえで、月数千円からでも無理なく続けられる額で始めるのが王道です。

 若手会社員の場合、最初から値動きの大きい個別株や話題の商品に手を出すより、つみたて投資枠で長期・積立・分散を意識した商品を淡々と買い続けるほうが、結果として制度を使いこなしやすいです。焦って大きく増やそうとするより、途中でやめないことのほうが、資産形成ではよほど重要です」

――支出を管理するのと同じくらい、自分の手元に入ってくるお金や取られている税金を確認することも資産形成や自身の経済感覚を養う上で重要だと思われます。若手社員が給与明細を見る際、どのポイントに気を付けて給与明細を見ればいいのでしょうか。

「若手社員ほど、給与明細は“振り込まれた金額だけ確認して終わり”にしがちですが、実はそこには、お金の管理に必要な情報がひと通り詰まっています。給与明細を受け取ったら、各項目を一つずつ確認し、できれば一度、自分でも計算してみることをおすすめします。

 チェックしたいポイントは、大きく分けて1、支給額と2、控除額の2つです。まず1の支給額ですが、残業代が発生している場合は、どのような計算式で時間外手当が算出されているのかを確認しておきたいところです。計算方法は就業規則や賃金規程で定められていますが、一般的には、勤務状況(日数や労働時間)を踏まえたうえで、

時間外手当=(基準内賃金合計÷所定労働時間)×割増率×時間外労働時間

 という考え方で計算されます。残業時間が多い月ほど、この欄をきちんと見る習慣をつけておくことが大切です。

 次に2の控除額です。ここには、社会保険料、所得税、住民税などが含まれます。まず、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料といった社会保険料は、会社から支払われる給与をもとに決まります。基準となる給与には、基本給だけでなく、通勤手当や残業手当など、税金などが差し引かれる前の各種支給額も含まれます。こうした給与水準をもとに「標準報酬月額」が決まり、その区分に応じて保険料が算定される仕組みです。実際の保険料は、標準報酬月額に健康保険、介護保険、厚生年金それぞれの保険料率を掛けて計算され、原則として会社と従業員が半分ずつ負担します。

 さらに所得税は、課税支給額から社会保険料を差し引いた「課税対象額」をもとに計算されます。会社は、国税庁が公表している源泉徴収税額表(月額表)を参照し、扶養家族の人数などに応じて、その月に徴収する所得税額を決めています。毎月の税額が一定ではないように見えるのは、この仕組みによるものです。

 一方で住民税は、その年の給与ではなく、前年の所得をもとに市区町村が決定する税金です。毎年5月から6月ごろに、社員の住所地の市区町村から会社へ「特別徴収税額の決定通知書」が届き、それに基づいて毎月の住民税額が給与から差し引かれます。新卒2年目の6月に手取りが減って驚く人が多いのは、この住民税の天引きが始まるためです。

 給与明細は、単に手取り額を見るためのものではありません。何がいくら支給され、何がどのようなルールで差し引かれているのかを把握することで、自分の収入の構造が見えてきます。若いうちから給与明細をきちんと読む習慣をつけることが、家計管理や資産形成の第一歩になるでしょう」

税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏 ※提供画像

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://www.316459.com/