今年2月、千葉県の市川市動植物園で、2025年に生まれたばかりの子猿が世界的な注目を浴びた。その名は「パンチ」。

「パンチくんは、25年7月に生まれた小さなオスです。実の母親が育児放棄をしてしまい、彼が母親代わりにオランウータンのぬいぐるみをぎゅっと抱くけなげな姿が、多くの人の心をつかみました」(夕刊紙デスク)

 既出のニュースで報じられているように、現在、パンチくんはぬいぐるみから自立、ごく普通の猿に成長しつつある。そんな現在に至るまでの知られざる現場の裏側についてレポートしたい。(前後編の前編)

「きっかけは、2月5日、市川市動植物園の公式Xで、ぬいぐるみを抱くパンチくんの画像が公開されたことに始まります。画像はまたたく間に世界中に拡散され、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』といった米大手メディアでも報じられました」(前同)

 やがて市川市動植物園には批判が殺到することになる。ネット上で“いじめ動画”が拡散されたからだ。

「とりわけ“炎上”したのは、2月19日頃に広がった、パンチくんが大人のサルに引きずられているように見える動画です。

 園は翌20日に、パンチくんが別の子猿に近づいたことで、その母猿とみられる大人の猿に叱られた可能性が高いと声明を出しました。さらに、群れの中で“サルとして生きるためのコミュニケーション方法”を学ぶ過程の一場面だと説明しました」(同)

 だが、ショッキングな場面だけのキリヌキ動画は拡散され、「パンチがいじめられている」「群れから離すべきではないか」という声が広がっていった。

 これに対し園は、2月20日から3月10日にかけて公式サイトで計4本の声明を公表。動画拡散への対応や健康状態、人工哺育の経緯、いじめ批判への考えを段階的に説明した。

「3月10日の声明では、ニホンザルの群れには明確な社会階層があり、支配的な個体が下位個体を“しつける”ことがあると説明しました。これは人間の虐待とは異なり、パンチくんだけに起きる特別なことではなく、パンチくん自身も大半の時間は落ち着いて過ごし、ほかのサルと遊ぶ姿も増えているとしています」(同)

 園は、順位の高い個体数頭から手を出される場面が増えたため、一時的にその数頭を群れから離したことも明らかにした。3人の獣医師チームが毎日健康状態を確認しており、現時点で生存が脅かされるような攻撃はないという。「パンチを群れから離して」という声にも理解を示しつつ、今ここで離せば生涯群れに戻れなくなるおそれがあるとしている。