■商品化やコラボの打診は100件超

 寄付金の使い道として園が重視しているのは、猿山全体の環境改善だ。

 そもそもパンチくんが母親の愛情を受けることなく孤独の身になってしまったのには、ある意外な理由があった。

「近年の猛暑の影響です。コンクリートの壁と岩山で覆われた猿山というのは、直射日光の影響をもろに受けます。パンチの母猿が育児をしなかった原因の一つに、生まれた日が非常に酷暑だったということが考えられます」

 実際、パンチくんが生まれた2025年7月26日、千葉県内では、市川市に近い船橋で最高34.0度、佐倉で35.1度、我孫子で35.6度を記録していた。

「すでに猿山にスプリンクラーを設置していますが、それだけでは十分ではなく、猿たちが昼間に休める日陰を増やすなど、健康を守るための改修や修繕に使いたいと思っています」(同)

 ブームの中で避けて通れないのが関連商品の扱いだ。パンチ人気を受け、商品化や出版を求める声がある一方、「動物園がお金儲けをしていいのか」という視線もある。実際、商品化やコラボの打診は寄せられているという。

「パンチ人気を受け、商品化やコラボの打診は100件超に上っています。一方で、地域活性化につなげるべきだという声がある反面、人気の収益化に慎重であるべきだという意見もあります。園としては双方を踏まえ、現時点で関連商品や出版、写真集などを積極展開する考えはなく、収益化には慎重に対応しています」(同)

 こうした熱狂を、園はどう受け止めているのか。

「我々は今、パンチに関するブームの中におります。来園される方の多く、ほとんどはパンチを非と一目見ようということで、国内外から大勢の方が押し寄せている状況です。我々はこの状態を一つのチャンスだと捉えています。来るときはパンチがきっかけ、帰るときは市川市動植物園全体のファンになっている。そういった取り組みをやっていきたいですね」(安永氏)

 小さな子猿が呼び込んだ関心を、園の魅力や飼育環境への理解につなげられるか。パンチくん人気は、これからの動物園にとって新たな追い風にもなりそうだ。

【前編】市川市動植物園による愛情ある飼育によって、群れになじみ始めて少しずつたくましく成長しているパンチくん。だが、本当の試練はここから。目指すべきゴールはまだ先にあると、市川市動植物園の安永崇課長は話す。

《【前編】はこちらから》

取材協力:市川市動植物園 
[住  所] 動物園 〒272-0801 市川市大町284番1
[開園時間] 午前9時30分から午後4時30分(ただし、入園は午後4時まで)
[休園日] 毎週月曜日(祝日と重なった場合は翌日)、年末年始
[公式ホームページ] https://www.city.ichikawa.lg.jp/site/zoo/