■話の暗さ、ダブルヒロイン構成の“見にくさ”も指摘されて……

 また、そういったスピーディな作風も影響しているのか、『ばけばけ』と比べて話の暗さ、登場人物の描写が嫌になってしまったという視聴者も少なくないようだ。

 実際のところ『ばけばけ』も、序盤から主人公家族が借金地獄で生活できなくなったり、トキが世間からラシャメン(洋妾)と誤解されてしまったりと、暗い話も多かった。

 しかし同作は、演技力抜群の俳優陣によるコントのような掛け合いなど、コミカルな演出が多かったため、むしろ“明るく楽しい朝ドラ”と感じた視聴者も多かったのではないだろうか。悪役的に描かれたキャラたちも、多くがどこか間抜けで憎めない人ばかりだった。

 一方『風、薫る』の場合は、少なくとも現時点ではシリアス寄りの作風で、コミカルなシーンは少ない。登場人物の描写も “マッチ工場の社長など多くの人が捨て子の直美(上坂)を差別し続ける”というのを筆頭に、善人がいないわけではないが、後味の悪い描写が目立つ。

《恨めしいシーンがただどんより暗くて…………ばけばけって凄かったんだなそう思うと》
《『ばけばけ』ではラシャメン騒ぎは別として、こういう心底嫌な人は出てこなかったなぁ⋯ってあらためて思った朝》
《借金取りやあることないこと記事にする新聞記者ですらどこかに愛嬌やら人間臭さを描いたばけバケに比べて、風、薫るの登場人物の陰湿だったり妬み嫉みがきつくてみてるの辛い》 

 そして、『ばけばけ』は高石演じる主人公・トキを中心にした物語がじっくりと描かれた一方、『風、薫る』は朝ドラとしては異例の“ダブルヒロイン”という点が、裏目に出ているという声も。

『風、薫る』では、栃木・那須地域に住むりん(見上)、東京に住む直美の生活が並行して描かれている。現時点では“りんの物語”の方が深く描かれているが、直美サイドも勤め先を濡れ衣でクビになるなど、話が進んでいる。

 2人の物語が同時進行することで、父親は死んだが周囲から愛されてきたりんと、生まれながらにして差別されてきた直美という正反対の人物の対比をしっかり描けているところはある。

 しかし、この構成には、ストーリーのテンポが悪くなるなどデメリットもあり、

《せめて2人が合流するまでは、今日(or今週)はりんの話、次の日(or次の週)は直美の話、と分けてくれればまだいいのだけど。同じ日にどっちの話もしようとするから、忙しなくて》
《Wヒロインなので仕方ないけど栃木と東京で時々話が飛ぶので、2人が合流するまでの間は頭の切り替えが課題》
《風薫る、エピソードぶつ切りすぎて毎シーンんっ?今どういう状況?ってなってまうWヒロインだから尺足りないとかじゃなくりんサイド飛び飛びしすぎ》

 といった、見るのが難しいと言う声も少なくない。

 スタートダッシュに失敗した感もある『風、薫る』だが、物語はまだプロローグの段階。話が巻きで進んでいるのは早く2人を合流させるためだと考えられる。合流すれば “同じ看護学校で頑張る2人”という構図になるはずで、現在のような極端な場面転換は減るのではないだろうか。

『ばけばけ』の場合、トキの描写をメインに、後の夫・ヘブンの物語を並行して描き、第5週で合流――という構成だった。本格的なダブルヒロインものの『風、薫る』の場合、どれだけ早く2人が合流できるかが、今後の人気に影響しそうだ。

特撮・ドラマ・映画ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受け、平成ライダー、そして現在放送中の令和ライダーを筆頭に、特撮作品を愛するように。
特撮出身の俳優を追う過程で一般ドラマや映画の世界にも興味を抱くようになり、旬なドラマ・映画は欠かさずチェック。エキストラとして作品に参加し、阿部サダヲ藤原竜也など一流の俳優陣の生の芝居に衝撃を受けることもしばしば。特撮俳優のステップアップの場で知られる朝ドラも見逃さない。