■放送時間&演出手法の裏で見え隠れするTBSの皮算用
『九条の大罪』は放送時間が、1話辺り約40分。1話の上映時間が1時間を超えることも珍しくない配信ドラマとしてはやや短い時間設定だ。これもテレビスタッフが配信ドラマを制作したからこそ起きた弊害ではと前出の鎮目氏は指摘する。
「配信作品は全話が一挙に公開されるため、視聴者を物語の途中で離脱させない工夫が重要になります。Netflixのオリジナル作品は、どれも次の話へと視聴者を誘導させるのが非常に上手い。一方、テレビドラマは放送期間が1週間空くため、引っ張りすぎはかえって逆効果になってしまう。テレビドラマは1話である程度物語を完結させる必要があるんです。
『九条の大罪』は、放送時間も含めて動画配信サービス向けの作品作りというよりも、配信用に作ったテレビドラマという印象がぬぐえません」
『サンクチュアリ』と『地面師たち』の放送時間は、1話あたり1時間ほど。『九条の大罪』は、作品内での描写も放送時間も、両作に比べると配信らしさを活かしきれていないということか。配信開始直後の今でこそ視聴回数首位を走るものの、その地位はいつまで続くのか。
「『サンクチュアリ』や『地面師たち』に比べて描写は控えめで、番組の作りもテレビ的だったかもしれません。ただ、ドラマ全体としては甲乙つけ難いほど完成度が高い。あとは、今の視聴者の好みがどちらかにもよるでしょう」(前同)
また、過激な描写を抑えた背景には、テレビ局制作ならではの狙いがあったのではと鎮目氏は予想する。
「『九条の大罪』がNetflixで話題になった際にはシーズン2の配信前に地上波で放送することなども検討していたのかもしれません。過去の人気ドラマがNetflixで配信されることはあっても、Netflixの人気作品がテレビで放送されたことはない。もし、放送されれば大きな話題になるでしょう。当然、テレビだと描写が過激すぎると放送できません。番組の尺がテレビに近かったことを考えると、この可能性は十分ありますよ」(同)
Netflix配信番組の制作となれば、テレビ局は番組の制作費を自社で負担する必要がない。その上で配信後に番組を地上波で放送すれば、スポンサー広告収入まで得ることができる。『九条の大罪』の成否は、日本のドラマ産業の今後の在り方に大きな影響を与えるかもしれない。
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)