■無尽蔵に人工石油を作り続けられる「産業用装置」も実用化の段階

 こうした“脱石油”の流れの中で、期待されているのが合成燃料、俗に言う“人工石油”だ。

「CO2(二酸化炭素)と水素を材料にして、ガソリンや軽油のような燃料を作る技術です。まずCO2を集め、そこに水素を加えて燃料のもとを作る。それを加工して、液体燃料に変えます。代表的なのがフィッシャー・トロプシュ合成と呼ばれる技術です」(前出の愛知工業大学総合技術研究所教授の近藤元博氏)

 現状の課題はコスト面。

「原料となるCO2は空気中に約0.04%程度しかなく、空気から直接集めるのは簡単ではない。そのうえ、大量の水素の製造や燃料化にも大きなエネルギーと設備が必要です」(前同)

 日本政府も石油への依存度を下げるべく、こうした次世代脱炭素エネルギーの普及を国策として推進。2050年にはガソリンと同程度もしくは安く供給することを目指しているという。

「30年頃には、E10のような燃料が国内でも普及する可能性が高まっています。

 そこから40年にかけ、合成燃料の商用化が進み、バイオ燃料と合成燃料が通常のガソリンと混在して、市場で使われる形になるのではないでしょうか」(同)

 一方で、さらに夢のある構想を掲げる研究者もいる。京都大学名誉教授で工学博士の今中忠行氏だ。

「“夢の技術”という段階は終わりました。私はすでに人工石油を連続生産する産業用装置を作り上げ、実用化の段階に入っています。

 開発段階では、自動車も問題なく走行していますし、現在は産業用装置の製造設計に入っています」

 今中氏開発の「ドリーム燃料」は、大気中のCO2と水をもとに、無尽蔵に人工石油を作り続けられるというもの。しかも、排気ガスもきれいで、環境に優しいうえに、性能面の向上も期待できるという。

「走行距離が1.2倍程度に伸びることも開発段階では確認できました。4トン・10トントラックやディーゼル車でも同様です」(前同)

 驚きなのが、その価格だ。

「軽油であればメンテナンス込みでも1リットル14円程度。税金を払っても50円以下に収まる計算です。

 ホルムズ海峡が閉鎖されても、これが普及すれば、日本は地産地消でどこでも燃料を作れる産油国になれるんです」(同)

 燃料代を気にせず、車を運転できる日も近い。