■四国・九州は名駅弁の宝庫
そして静かな実力派として忘れ難いのが、二葉が手がける、愛媛県今治駅の『瀬戸の押寿司』(税込・1800円)である。
「まず開けた瞬間、タイと大葉の美しさがすごく印象に残る駅弁ですね」(前出のやすこーん氏)
実際、箱を開けると、白く艶のあるタイの身が整然と並び、大葉の緑が鮮やかに映える。今治沖の来島海峡は日本三急潮流の一つで、その速い潮流に育まれた鯛は格別の味だ。
「白く艶のあるタイの身がびっしりと並び、見た目からして実に上品。塩で締め、だしにくぐらせた白身は、ほどよい脂があり、押寿司にちょうどいい。具材もタイの他は大葉と寿司飯だけとシンプルで、素材の持ち味を、まっすぐ生かした味わいになっています」(同)
続いて九州。毎年、JR九州が主宰する「九州駅弁グランプリ」も開かれており、名作駅弁の宝庫だ。
中でも、旅情あふれる逸品として多くのファンを引きつけるのが、森の弁当やまだ屋が手がける、鹿児島県霧島市・嘉例川駅名物『百年の旅物語 かれい川』(税込・1800円)だ。
嘉例川の原木栽培シイタケやタケノコ、さらにサツマイモや野菜を太めの千切りにして揚げた郷土料理・がねなどを詰め込んだ一折。
「私は肉が入っているものが好きなんですけれど、これは肉も魚もまったく入っていないのに大好きなんです。中身は地元野菜が中心で、特に“がね”が絶品。本当に感動するくらい、おいしい」(やすこーん氏)
この嘉例川駅はJR肥薩線にあり、築百年を超える木造駅舎は国の登録有形文化財に指定されている。特筆すべきは、ローカル線の無人駅なのに、前出の「九州駅弁グランプリ」で、何度もグランプリに輝いている点だ。
近年、百貨店やスーパーでも駅弁の催事が行われているが、駅弁の日を口実に、いつもより少し本気の一折に手を伸ばしてみたい。
【前編】4月10日は「駅弁の日」専門家が厳選、崎陽軒からJR室蘭本線「母恋めし」まで 絶対食べたくなる逸品【東日本編】では、関東を代表する崎陽軒からJR室蘭本線「母恋駅」の名物、日本海の景色を眺めながら食べたい『鱈めし』などを紹介。やすこーん氏が伝授する裏ワザ的な食べ方も必見だ。《【前編】はこちらから》
やすこーん
2008年から「乗り鉄」「撮り鉄」「メシ鉄」として、旅して描く(書く)漫画家&文筆家。駅弁、駅そば、お酒、温泉を楽しむ「鉄道ひとり旅」が好きで、食べた駅弁は2600個以上。東京都在住だが、47都道府県に宿泊済。小学館の児童誌でデビュー以来、子どもから大人までファン層は広い。キャラクターデザイン、シナリオ制作、ワークショップ、音楽など多彩に活動。『GOGO♪たまごっち!』の単行本売上は50万部を超える。代表作は『おんな鉄道ひとり旅』全2巻(小学館)、『メシ鉄!!!』全3巻(集英社)ほか。