■もう一人の主人公・直美も連続で悲劇が
父の急逝とクズ夫の酷すぎる仕打ち――主人公・りん(見上)を巡って辛い出来事が2つ続く一方で、もう一人の主人公である直美(上坂)も救いのない展開が続いている。
直美は生後間もなく親に捨てられた身の上。4年前に直美を引き取った教会の牧師・善作(原田泰造/56)という理解者はいるものの、「耶蘇(キリスト教)の貧乏女」「女郎に捨てられた」などと世間からずっと蔑まれてきた。
物語開始時点では給金の安いマッチ工場で働いていたが、辛い生い立ちにくわえて、直美が細かい作業が苦手なことから工場長(花戸祐介)に冷遇されてきた。
そして、4月6日放送回では、工場長がしおり代わりにお札を挟んでいた本が何者かに盗まれる騒動が勃発。工場長は直美が犯人だと決めつけて、彼女をクビにしてしまう。真犯人は直美の同僚・初(火ノ口紗彩/22)だったが、赤子を背負う彼女を見て、直美は「分かった、辞めますよ。私が辞めりゃいいんでしょ」と罪をかぶる。
さらにその直後、直美は職探しをするがどこにも取り合ってもらえず。しかも、得意の英会話でかんざし屋を助けたのに、その主人からも「あんたが英語を話せるのは教会に捨てられたからだ」と全く相手にされない。しかも、「器量は悪くない。誰かのおめかけさんに収まるか、あとは女郎に……」とまで言われ、直美は「ふざけんな!」と声を荒げ――という辛い展開が描かれた。
直美は「この国じゃ逆立ちしたって幸せになれない。もうこんな国出ていってやる!」と、日本を去る宣教師のメアリー(アニャ・フロリス/34)にアメリカに連れていってほしいと懇願しているが、叶わぬまま終わることは目に見えている。
ダブルヒロイン両方の、序盤からの理不尽で重い展開の数々――作品全体のあらすじから察するに、この先にりんと直美が合流して“最強バディ”に成長していくわけだから、これまでの辛い展開はいわば前フリということだと考えられるが、現状の低視聴率を考えると、そこに至るまでのところで視聴者が耐えきれず脱落しつつあるのではないだろうか。
思い起こせば、高石あかり(23)主演の直前作で、時代設定も近い朝ドラ『ばけばけ』も、「松江編」の終盤、“主人公が外国人の夫と結婚後、ラシャメン(洋妾)と誤解されて近隣住民から酷い嫌がらせを受ける”という話が描かれ始めた時期、視聴者から《朝から辛い》《見るのがしんどい》などという声が増えていた。その後に舞台が熊本に移ってからのシナリオがイマイチだったこともあり、人気が失速。
重く辛い展開を描き、どん底に落ちた主人公が奮闘して人生が好転していく――物語の王道パターンだが、視聴者も1日の始まりの朝に暗いドラマをずっと見るのは辛いところだと考えられる。りんと直美、主人公の2人が早く会わなければ、『風、薫る』はさらなる危機を迎えてしまうのかも……。
特撮・ドラマ・映画ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受け、平成ライダー、そして現在放送中の令和ライダーを筆頭に、特撮作品を愛するように。
特撮出身の俳優を追う過程で一般ドラマや映画の世界にも興味を抱くようになり、旬なドラマ・映画は欠かさずチェック。エキストラとして作品に参加し、阿部サダヲや藤原竜也など一流の俳優陣の生の芝居に衝撃を受けることもしばしば。特撮俳優のステップアップの場で知られる朝ドラも見逃さない。