■ピアス穴を開けるのは病院が絶対に安全という事実
ピアス穴の位置に関する医学論文はいくつかあるという。ただしそれは「何十年も前の時代遅れなものばかりで参考にならない」と前出の野田医師は話す。そのため自身が院長を務める『神楽坂肌と爪のクリニック』では、数多くの実績と経験をもとに独自の基準を設けているという。
「耳たぶの付け根(専門的には下耳底線を通る垂線)から後方に7ミリ。耳タブの縁から上方に5~7ミリ。この基準をベースに、患者さんの好みや耳たぶの形や立ち方、左右差などを考慮して安全かつ見栄えのする最適な場所を微調整しています。使用するピアッサーも医師専用で、位置が正確で痛みも少ないのが特徴です」(前同)
また、知識がないばかりにピアスを耳の中に埋没させてしまうケースも少なくないという。
「ピアスを耳の裏で留めるキャッチ部分を強く締めすぎて、ピアスが耳の中に埋まってしまうことがあります。こうなると麻酔をして取り出さないといけません」(同)
他にも耳の変形や傷跡が残るなど、一度のトラブルが長引くこともある。
「一度の失敗が生涯のトラブルにつながることもある。だからこそ、ファーストピアスは重要なんですが、深く考えずに安易に開けてしまい、後悔する方が多い印象です」(同)
リスクがあるにもかかわらず、なぜ多くの人が市販品を使ってまでピアス穴を開けるのか。最大の理由は、費用の違いにあるようだ。
「病院でピアスを開けるのは自費診療です。そのため、病院ごとに値段は変わります。だいたい3000円から1万円の間が相場でしょう」(同)
実際に『神楽坂肌と爪のクリニック』でもピアス穴1ヶ所4620円~(診察料別、以下同)。一方で、市販のピアッサーを使えば1か所700円ほどでピアス穴を開けることができる。残念なことに、自分でピアス穴を開けるも、その出来栄えに満足がいかず、せっかく開けた穴をふさごうと考える患者さんも少なくないという。
「当院では、失敗したピアス穴をふさぐ手術もしています。ふさぐ手術は特殊なので、どこの病院でもやっているわけではありません。跡が目立たないようにふさぐには経験とスキルが必要で、当然、穴を開けるよりも費用は高くなります」(同)
同院でピアス穴の閉鎖にかかる費用は最低でも44000円。耳たぶの反対側が見えるほど穴の大きな拡張ピアスの閉鎖にいたっては、11万円以上かかるという。小さな穴とはいえ、ピアスは体を傷つける行為。一時の感情に左右されず、慎重になるべきだと野田医師は言う。
「ピアスを開けることに迷いを持ちながら来院される方もいます。冷静に判断していただくために、場合によっては一旦引き取っていただくこともあります。ピアスを開けることを急ぐ必要はありません。ご家族と相談するなり、慎重に考えてくださいね、とお伝えしています」
新生活が始まるこの季節。様々な出会いや今までにない経験に胸をときめかせることも少なくないだろう。そのひとつひとつを自分でしっかりと判断すること。それこそが、大人になるということの第一歩なのかもしれない。
野田弘二郎
医師・医学博士・形成外科専門医 『神楽坂 肌と爪のクリニック』院長。1991年久留米大学医学部卒業。昭和大学形成外科、千葉大学病院、パリ第7大学サンルイ病院などを経て、2009年に現クリニックを開業。医師、医学博士、プロネイリストの資格を持ち、爪やピアスのトラブルを専門的に治療している。日本形成外科学会専門医。皮膚腫瘍外科指導専門医。
YouTube『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』にて、爪やピアスのトラブルに関する情報を発信している。