東京都内では、早くも花見シーズンが終了。花見といえば、平成までは会社行事の一つに数えられることもあり、若手社員は桜の木の下を確保するべく、日中から「場所取り」が行なわれるのも風物詩だった。しかしよく考えてみれば、花見はもとより、職場のメンバーのための「花見の場所取り」は、本来の業務とはまるで関係がなさそうに思える。場所取りは業務なのか非業務なのか――。

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 関東の小さなメーカー工場に勤める西谷直樹さん(32・仮名)がボヤく。

「僕は中途入社なのですが、3月のある日、出社すると上司から“今日、正午から場所取りに入れる? 公園の桜が見頃らしくて。今日を逃すと、明日から雨みたいだから”と、花見のための場所取りシフトの確認をされたんです。今の工場では、毎年、花見の名所に集まって皆で花見をするのが恒例で、人気の場所は早めに確保しておくのが若手の任務なのだとか。

 場所取りをするにあたって、レジャーシートだけ広げておくのは“マナー違反”だとしていろいろ言われてしまうため、花見までは必ず社員がひとり、場所取りの場にいることが鉄則となっているとのこと。そのためのシフトが若手社員を中心に毎年組まれているというわけです」(西谷さん)

 西谷さんは、「勤務時間中、場所取りのためにシートの上に座っているだけならいいか」と承諾。結局、若手社員3人が交代で場所取りをし、18時半から花見がスタートした。“事件”が起こったのは、その後だ。

「花見が始まったらもう場所取りは必要ないので、帰ろうとしたんです。屋外での花見って、案外夜は寒くなるし、酒が足りなくなってパシリにさせられそうだし、そもそも地べたに座って飲むのが好きじゃない。片付けをしなくちゃいけないのもダルいなと。そして職場の人たちと一緒なんて、気も遣うし気持ちよく飲めなさ過ぎます」

 しかし西谷さんが「それでは、お疲れさまでした」と言って爽やかにその場を去ろうとすると、50代の女性上司につかまったという。

「“なんで帰るの? 西谷くんと親睦を深める意味合いもあるんだから、あなたはいなくちゃダメでしょ”と圧がある感じで言われました。僕の親睦会なんだったら、主役は僕ですよね? 仕事でもなく、その僕が全然望んでいないことを強要されるのって、もはやパワハラじゃないかと思うんですよね……。

 そもそも場所取りは勤務時間内でやったことですし、花見も仕事のうち、ということなんですかね? もし業務だというなら残業代も貰えますよね……」

 実際、花見の場所取りは業務なのか、業務ではないのか。花見の場所取りを上司が部下に命じることはパワハラになるのか、ならないのか――。