「今年から、うちの学校では生徒に成績をつけません」──。

 静岡県掛川市のある小学校で、新入生の保護者説明会が行われた。この日話題に上がったのは、”通知表の廃止”だ。この春、こちらの小学校に息子が入学したという30代の主婦が話す。

「驚きましたね。通知表がなくなるって、どういうことなんだろう。私たちの時代は学校から帰って親に見せるのが普通でしたから」

 実は今、小学校で通知表を見直す動きが始まっている。静岡県掛川市では、2026年度から市内の全小学校で1〜3年生の通知表を廃止。2027年度には、4年生まで対象を広げる方針だ。岐阜県美濃市でも2025年度に小学1年生で通知表を廃止し、2026年度から2年生にも広がった。

「学校には指導要録という記録を残す義務があります。ただ、通知表には法律上の義務はありません。各学校の校長や教育委員会の判断でなくすことができます。通知表を廃止する動きは、2010年代後半頃から少しずつ始まってきました」

 こう話すのは、公立小学校に23年間務めた元教師で、『ドラゴン桜 わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』などの著書もある教育評論家の親野智可等氏だ。では、通知表は本来どのような役割を担ってきたのか。

「一つは、学校での学習状況や生活の様子を家庭に伝えること。もう一つは、子ども自身が自分を振り返るきっかけをつくることです」(以下、コメントは親野氏)

 こうした役割を持つ通知表の見直しの目的の一つは、評価の方法を見直すということ。通知表の評価方法は時代とともに変化を続けてきた。

「昭和の時代は、5段階評価を相対評価で決めていました。クラスの中で上位7%が『5』、24%が『4』といったように、割合で決めていたんです。それが2001年頃から絶対評価に変わりました。基準を満たせば評価されるので、理屈的には全員が『5』になることもありえます」

 相対評価はクラス全体のレベル次第で成績が変わるため、子どもの実力が正しく反映されにくい。そこで“ゆとり教育”の頃から始まったのが絶対評価だ。さらに現在では、評価の仕組みそのものも変化している。

「今の小学校は数字で評価をしません。『知識・技能』、『思考・判断・表現』、『主体的に取り組む態度』という観点に対して、ABCや◎○で評価します」