■膨らむ違和感に見切りをつけるタイミングは?

 この『パープル企業』が今になって社会問題と化した理由としては、20~30代となったZ世代が社会人になったことが挙げられるという。

「Z世代は幼い頃からゲームなどで刺激の多い環境に慣れているためか、ドーパミン的な刺激に依存する傾向があります。自分が主体として動く経験が多かった彼らにとって、“社会の歯車”として粛々と業務に取り組む姿勢に違和感を覚えやすい。特に内部が整えられたホワイト企業ではルーティンワークが多く、“渋々働かされている感”を抱いてしまうのです」

 要は、Z世代にはワクワクするような刺激がないと続かないということのようだ。では、“ワクワク”を求める若者は、どのように働くべきなのか。

「一番は、仕事をする中で成長実感を得られることです。仕事の進め方を考えたり、自分のアイデアを通すために試行錯誤したりすることにワクワクできれば成功。それが難しいならば、仕事以外に副業や趣味を通してドーパミンを得られる環境を持つことも有効です」

 企業側が若手社員の流失を防ぐためには、この“ワクワク感”を与えられているのかを今一度見つめ直すのが必要だろう。ハラスメントがないだけでは、今の若者は満足しないようなのだ。

 反対に働く側が納得したキャリアを求めるためには、入社前に働くビジョンを想像することが必要だと、杉山氏は言う。

「キャリアを考える中で見定めるポイントは、“ビジネスモデルに共感できるか”“組織風土に馴染めるか”“職種が自分に合っているか”の3点です。より“やる気”につながるのがどのポイントかは個人によりますが、ホワイト企業を求めて入社しても、そもそもの事業内容や企業価値などのビジネスモデルに魅力を感じなければ長続きできないことがほとんどです」

 これらのポイントを押さえて、企業とのミスマッチがないかをお互いが考える必要があるということのようだが、そうは言っても、実情は入社しないとわからない部分も大きい。働く側が実際に入ってみて、「思ったのと違った」と感じることもあるだろう。その違和感が次第に大きくなった場合は、どのすればよいのだろうか。

「他の職種に心が向いていたり、やりたいことがあるなら早めに動くのも選択肢。決まっていないのならば、営業活動から納品まで一通りの業務を経験してみるなど、せめて1年は働いてみましょう。その経験は、よそでも必ず生きてくるはずですから」

 自分はどんな仕事で何をするとワクワクするのか。一度内面と向き合ってみる必要があるのかもしれない。

「私も、“研究”というワクワクする、しかし先の見えない世界に飛び込んで30年。不安な時期もありましたが、今はある程度の安定を得ています。まずは、自分の求めるものは何か考えるきっかけを作ってほしいですね」

 考え抜き、あがいた人間にこそ、魅力を放つことができる。若者よ、大志を抱け!

杉山 崇(すぎやま・たかし)
心理学者。臨床心理士。神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授。心理相談センター所長。公益社団法人日本心理学会代議員。
子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。心理学と脳科学を融合した次世代型の心理療法を目指す。心理療法家としても科学的心理学研究者としても、国から指導者レベルの評価を受けている心理学者。2児の子育て中。著書に『ウルトラ不倫学』(主婦の友社)、『読むだけで人づきあいが上手くなる。』(サンマーク出版)、『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(永岡書店)、『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)、『精神科医が教えない「プチ強迫性障害」という「幸せ」』(双葉社)など。