■漢字は読めるけれど書けなくなった

 こうした世界的な潮流の一方で、日本国内の現場では、活用以前の段階で理想から程遠い事態も起きているようです。名古屋市の事例によれば、モデル校として予算が潤沢な学校がある反面、多くの一般校では通信速度の遅延や教員のスキル不足により、授業が円滑に進まない場面も少なくありません。結局、高価な端末を持ち帰りながらも、用途は「先生からの連絡事項の確認」のみ。学習の柱であるはずの授業で活用しきれず、ただの重い荷物と化した「デジタル連絡帳」が全国のランドセルに収まっているんです。

 ネット上でも、「漢字は読めるけれど書けなくなった」「塾では紙と鉛筆だけど、結局、手を動かさないと頭に入らないのが現実」「学校のタブレットが始まってから、子供の視力が急激に落ちた」といった現状を危惧する声が溢れています。

「デジタル先進国といわれるスウェーデンなど海外の動向を見ると、デジタル化による試行錯誤の段階は終わり、“副作用”への対処が始まっています。日本でもタブレット導入後、低学年で視力1.0未満の児童が激増しており、健康への影響は無視できないレベル。さらに、端末の更新費用を自治体が負担しきれず、保護者に数万円の購入費を転嫁する動きも加速しています。数万円を払って、『連絡帳』を買わされる親の不満は爆発寸前でしょう」(教育メディア関係者)

 タブレット端末は、導入すればすべての教育問題が解決する「魔法の杖」ではありませんでした。端末の電源を切ることで、初めて子供たちが自分の頭で考え始めるのだとしたら、これほど皮肉なことはありません。教育の現場が今一度、五感を通じたアナログに立ち返ることは決して古いやり方に戻るのではなく、今の時代にこそ必要な進歩と言えるのではないでしょうか。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やwebメディアの編集長を経てフリー。雑誌&webライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。