■『下剋上球児』のあやまち再びか

 X上では、《試合シーンは速さ、ぶつかる音、選手の声。選手の顔下からのアングルで迫力満点でした》《スポーツが絡む日曜劇場は熱くて好き。問題アリ、弱小、バラバラみたいなところを「宇宙」に例えてポジティブに語られてるの良い。俳優さんの車いすワークもすごい》などと、車いすラグビーシーンへの賛辞の声が集まった。

 日曜劇場としては、ラグビー部を舞台にした19年放送『ノーサイド・ゲーム』、高校野球部を舞台にした23年『下剋上球児』などに続く、好評のスポーツもの。“ラグ車”と呼ばれる専用車いすで激しくぶつかり合い、チームワークでトライを狙う試合シーンはリアルで迫力があり、さすが日曜劇場のクオリティだった。

 ただ、選手の意識や立場がバラバラの弱小チームが、さまざまな化学反応を起こして勝ち上がっていく流れは、既視感のあるベタな展開といえる。とはいえ、競技の説明や試合シーンが入るため、ストーリーはベタにわかりやすくする必要があり、ある程度、しかたないことだろう。

 それよりも気になったのが、サブに山田(宮下)、有村(霧山)、玉森(坂本)とメイン級の俳優をそろえたこと。日曜劇場らしい豪華な顔ぶれだが、存在感がありすぎて、主役の堤がかすんでしまった感がある。しかも、3人それぞれに面倒な事情を抱えているようで、堤(伍鉄)と車いすラグビーという本筋よりそちらが気になってしまい、初回で一気に引き込まれた、とはならなかった。低い数字はそのせいかもしれない。

 過去の『下剋上球児』も主人公の高校野球部監督・南雲(鈴木亮平/43)の教師資格問題に引っ張られ、肝心の野球が置いてけぼりになっていた回があった。スポーツものの場合、迫力ある競技描写と人間ドラマのバランスが難しいのだ。本作もサブに豪華キャストをそろえたせいで、本筋がかすまなければいいのだが……。

 とはいえ、そこは日曜劇場だ。原案・演出は『ノーサイド・ゲーム』などを手掛けた平野俊一氏。脚本はNetflixの大相撲ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』などを手掛けた金沢知樹氏で、バランスの取り方は心得ているはず。迫力ある車いすラグビーと重厚な人間ドラマに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。