■ドラマオリジナルの展開が仇に?
指摘にもあるが、12年を1クールで描くため、急ぎ足になるのは仕方ない。初回で学校存続の危機が明かされ、ふてくされていた生徒がクラゲ豆腐開発を始め、担任が自身の間違いに気づいて、唐突に宇宙食の衛生管理システム「HACCP(ハサップ)」が出てきて、最後は生徒も木島(神木)もやる気を出す……という展開で、正直、情報量が多すぎだった。
その結果、ストーリーは疑問符だらけ。生徒・菅原奈未(出口夏希/24)のダンスは回収されず、なぜ実習をしぶっていた漁師たちが、生徒・寺尾創亮(黒崎煌代/23)の父・茂信(迫田孝也/49)の言葉で、すんなり受け入れたのかよくわからないし、どうせ学校はつぶれると投げやりだった黒瀬(荒川)が、なぜ急に協力的になったのかも、よくわからない。
さらにJAXAでも、専門外への部署異動に納得していなかった木島が、どうしてHACCPで新しい宇宙食の基準を作ると前向きになったのかも、よくわからない。ついでに、ダイビングショップのオーナー・香織(熊切あさ美/45)の意味ありげな色気も、必然性がわからないまま。この消化不良ぶりでは、数字が悪いのも納得だ。
ここまで急ぎ足なのは、神木演じる木島をフィーチャーし、福井県小浜市の水産高校と、遠く離れたJAXAを並行して描いたせいだ。原作では生徒のサバ缶の開発がメインなのだが、ドラマではそこに手を加え、木島を重要人物として描くと思われる。そのぶん、生徒パートは省かざるを得なくなったのが大きいのだろう。
確かに、北村匠海(朝野)と神木隆之介の絡みは楽しみだが、ドラマ全体を見ると、良くない影響もありそうだ。いっそ、木島は後半にサバ缶の開発の鍵になる人物としてサプライズ登場し、教師の朝野と絡むぐらいにしたほうが、見やすくなったかもしれない。
とはいえ、物語は始まったばかり。教師と高校生たちが「自分たちのサバ缶を宇宙へ」という夢を追うという題材自体は魅力的なので、あとはそれをどう料理するかにかかっている。『ラジエーションハウス』や『HERO』など、多くの月9ドラマを手掛けてきた、演出・鈴木雅之氏の手腕にも注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。