■心理学の専門家が解説する“AI創作物”と“人間が創ったもの”の違い
なぜ人は、生成AIを使用した創作物に対して身構えてしまうのだろうか。中央大学文学部(心理学専攻)の有賀敦紀教授に話を聞いた。
「漫画や小説を読む場合、作品そのものだけではなく、作り手がどういう思いを込めてるかといった部分も含めて楽しんでいる人が多いのだと思います。その点生成AIが作った創作物となると、作り手の思いが込められていない、つまり人の手がかかっておらず、“手抜き”をしているように感じられてしまう。たとえば料理にしても、電子レンジで温めただけのものよりも、その場で作ったものの方が、なんだかおいしく感じることがあるかと思います。そのような心理に近いのではないでしょうか。
仮にまったく同じ作品であっても、“AIが作ったもの”として提示されるよりも、“人が作ったもの”として提示された方が楽しめるという人が多いというのはそういうこと。“作り手が込めた思い”や“作り手の個性”を含めたうえで、作品を評価するという考えが一般的なのだと思います」(有賀敦紀教授=以下同)
ただし、生成AIによる創作物にがっかりさせられる人がいる一方で、生成AIが身近な存在になりつつあるのは避けられない事実だ。だからこそ、有賀教授は「AIを使用した場合、作り手側に説明責任がある」という見解を述べる。
「AIを使っているということを明示していれば、受け手側の見方も変わってくると思います。たとえば、スーパーで売られているような袋菓子は、消費者側にも“工場で機械によって作られているもの”だという前提がある。そうした菓子に“作り手の思い”まで求めないでしょう。しかし、まだまだ小説も漫画も“人が作っている”という認識が強いため、AIで作っていることがわかった時にがっかりしてしまう。
そうなることを避けるためには、“どの部分に生成AIを使ったか”“どのように生成AIを使ったか”ということをあらかじめ説明しておく必要があります。受け手側もそれをわかっていれば、少なくとも“裏切られた”とはならないでしょうし、その作品をどう評価するかは、受け手側の感受性の問題となる。受け手に対する配慮という意味でも、生成AI使用時の説明責任は重要だと思います」
「この作品はAIを使用しています」──そんな注意書きがある漫画や小説が、当たり前のように流通する日も遠くないのかもしれない。
有賀 敦紀(ありが あつのり)
中央大学文学部教授。2009年、東京大学大学院にて博士(心理学)を取得。日本学術振興会海外特別研究員、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、立正大学専任講師・准教授、広島大学大学院准教授を経て、2022年より現職。専門は認知心理学および消費者心理学。認知心理学の知見に基づく消費者教育や、消費者トラブル防止に関する啓発にも取り組んでいる。