日々、“日本の今”を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。今回は、最先端技術でハイレベルな健康管理ができる「スマートベッド」について掘り下げます。
人生の3分の1を占める「睡眠」の時間が、“休息”から“高度な健康管理”へと変貌を遂げようとしています。
世界の医療用スマートベッド市場規模は、2024年時点で、5億4709万ドル(約870億円)と推定され、2033年には10億4016万ドル(約1657億円)に達すると予想される、まさに成長分野です。特に、日本では高齢化の進行や在宅医療の需要拡大を背景に、寝具の概念を覆す革新的な製品への注目が急速に高まっています。
最新のスマートベッドは、マットレスの下に配置された精密な体動センサーが心拍数や呼吸数、睡眠の状態をリアルタイムでモニタリング。IoT(モノのインターネット)を通じてスマートフォンや医療機関とデータを同期することもでき、これまでは病院の病室でしか行えなかったバイタルサインの計測が、住み慣れた「自宅の寝室」で日常的に行えるようになる可能性があります。
こうした「高度医療拠点」への変貌が期待されているのは、AI解析精度の飛躍的な向上に他なりません。スマートベッドの進化は計測機器の枠を超えて、いずれは「死の予兆」を捉える領域へと踏み出すことが期待されています。ICU(集中治療室)と同等の非接触センサーが、過去の膨大な蓄積データから呼吸のわずかな乱れや心拍変動の減衰を分析。数日後の体調急変や、心不全・脳梗塞といった疾患の予兆、さらには老衰による自然な看取りの時期までも予測し、家族や医師に通知する仕組みが現実味を帯びてきました。団塊世代が後期高齢者となり、病院のベッド不足が極まるなか、「病院に行けないなら、自宅を病院にする」という逆転の発想が、スマートベッドを最前線の医療機器へと押し上げている大きな要因と言えるでしょう。