■不動産の市場価格がそのまま相続税の対象にならない理由

 現在、太田さんが所有する資産は現預金で5000万円と夫婦で暮らすマンションだ。こちらの市場価格は1億2000万円ほどだという。このまま自分の身に万が一のことが起きれば、1億7000万円分の資産に相続税が加算されるのではないか、と恐ろしくなった太田さん。

 しかし、現在、自身が妻と暮らすマンションは太田さんが亡くなったとしてもそれを相続する人に市場価格と同じ金額で相続税が掛かるわけではないという。

 一般的な不動産については、土地は“路線価”、建物は“固定資産税評価額”によって相続税評価額が決まるという。これらは現在の市場価格である“取引価格”と比べると低く算出されるのだ。

 都市部の道路には価格がついており、土地の値段は、その価格がついた道路に接している面積を掛けて算出する。この路線価は地域差が大きい。仮に路線価が13万円だとすれば接する土地は1平方メートルで13万円となる。この路線価は通常の取引価格よりも2割ほど安いとされている。

 太田さんの手元へ毎年6月頃に自治体から送られてくる固定資産税の課税明細書を見てみると、建物部分の固定資産税評価額は3000万円。マンションが建つ土地全体の評価額は15億円。マンションは敷地を区分所有者で共有しており、その敷地権割合に応じて土地評価額が按分される。太田さんの自宅マンション分の土地評価額は750万円ほどとなる。

 所有マンションへ課税される金額は当然、物件の条件により変動するが太田さんのマンションの場合だと3750万円ほどが相続税の課税対象となる計算だ。

 つまり、太田さんが亡くなった場合、課税対象となる資産の額は8750万円だ。

 太田さんの資産を相続するのは自身の妻と息子2人。相続税には基礎控除がある。この金額は3000万円、そこに600万円を相続人数で掛けた数字が加算される。そのため、3人の相続人がいる太田家の場合4800万円が基礎控除額となる。

 8750万円から4800万円を引くと残りは3950万円。

 これを法定相続分にのっとって分けると、妻の手には1975万円が渡り、息子2人にはそれぞれ987万5000円が手渡されることになる。

 法定相続分通りに相続税の計算を行なうと妻にはおよそ240万円、息子2人はそれぞれ約100万円の合計約440万円が相続税総額となる。

 これを実際の割合で按分すると、配偶者である太田さんの妻にかかる相続税分は約220万円。しかし、相続税の申告を行なえば、妻には配偶者の税額軽減が適用される。これは軽減措置により1億6000万円あるいは法定相続分相当額のいずれか大きい額まで無税となる制度だ。結果として妻の相続税額はゼロになる。

 息子2人への課税額はそれぞれ約110万円ずつだ。これを知った太田さんはホッと胸をなでおろおしたという。

「散財もせずに一生懸命働いてきたので、普通の人よりは財産があるつもりでした。それを相続するとなった段階で多額の税金を取られると思うとゾっとしてしまって……。しかし、これなら自分が死んでも子供や妻に大きな負担はかけずに済みそうですね」

 しかし、実際には更に相続税を軽減させる制度が世の中には存在するという。そんなお得な制度を後半では税理士法人アクシア代表で税理士の曽根隆寛氏が解説する。