■抜群な野呂佳代の癒し効果

 序盤は物語の世界観と政治の現実感のなさを説明する場面が多く、ギクシャクした感じだった。しかし、茉莉(黒木)が父親である鷹臣(坂東)に反乱を起こしたあたりから、あかり(野呂)に出会うまでのドライブ感がものすごかった。点字ブロックをふさぐ人を注意した茉莉が、点字ブロックをふさいで逆に注意される、2つの描写の対比も効果的で、しっかり作り込まれた印象だ。

 佐野亜裕美プロデューサー、カンテレ制作、政治と社会問題を扱う内容に、《ちょっとエルピスみたときの感じを思い出す》《エルピスみたいな先が読めない展開を期待》など、22年放送『エルピス-希望、あるいは災い-』を思い起こす声は多い。しかし、本作は『エルピス』以上の話題作になる可能性が高い。

 不穏なムードが常に漂っていた『エルピス』に比べ、本作は緩急があって抜けがいい。サブキャラも鈴木亮平(43)が演じた悪役・斎藤正一に比べ、松下洸平が演じる日山流星は、うさんくさくも飄々とした感じが軽みになっている。そして、なんといっても野呂佳代の安心感。これらの要素が醸し出すとっつきやすさは大きな武器だ。

 本作は「選挙エンターテインメント」をうたっていて、内容的には“政治”と“選挙”という複雑な問題を扱うが、深刻にならずに誰でもが楽しめる作品になるはずだ。『エルピス』は確かに素晴らしかったが、ファンの中心はドラマ好きだった。本作は『エルピス』より、さらに多くの人に支持されるのではないだろうか。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。