元横綱・貴乃花と、ベストセラー『バカの壁』で知られる養老孟司氏との特別対談第2弾。知の巨人は我々が生きるこの世界を、どう捉えているのか。貴乃花が知的好奇心をぶつけた!
貴乃花 先生とは以前、とある講演会の控室でお会いしたんですよね。私は、『バカの壁』(新潮社)をはじめ、先生の著書をたくさん拝読してきたんです。
先生とお会いする前の話ですが、当時はまだ私も、部屋の弟子を育てていたから、世代間の違いを感じていました。私と弟子で、脳内思考がどう違うか、先生の本で勉強しました。
養老孟司氏(以下=養老) お役に立ちましたか?
貴乃花 それはもう! それに、初めてお会いしたときに、先生が、「人間が寝るとき、ある種、脳は死んでいる状態になっている」と、私に教えてくれたんです。
人間の脳は解明されていない部分が多いとおっしゃっていて、それがすごく印象に残っています。だから、毎晩、眠るときは、今から死の世界に入るんだなと、意識するようになりました。
――養老先生が、今年1月に上梓された『日本人が立ち返る場所』(KADOKAWA)でも、死生観について触れていました。
養老 我々の生きる世界は、誰かのシミュレーションゲームじゃないかという考え方が広がっていますよね。かつては、それは神様がしていたと言っていたけど。
今は、誰でもよくなった。宇宙人でもいいんですよ。誰かがセッティングして、それが進んでいる。
貴乃花 素人目ですが、脳内って小宇宙だなと思うんです。
現役時代、優勝がかかった前夜のことです。次の日の千秋楽で勝ったら優勝が決まるというときに本割りで負けて、その翌日、決定戦でもまた負ける――という夢を見たことがあるんです。そしたら本当に、その通りになっちゃった。
曙さんが相手だったんですけど、当時、まだまだ自信があったのに、夢のせいか金縛りにかかったように動けなくて。そのとき、人間は生かされているんだなと思いました。この世には不思議な力があるんだなと。