■火山列島ならではの地下資源

 資源はあるのに広がらない――。そんなもどかしさを抱えてきた日本の地熱発電だが、その壁を崩す切り札として期待されているのが、「クローズドループ」の次世代地熱発電だ。今回、1100億円もの支援が決まった次世代型とは、どういうものなのか。

「クローズドループは、温泉そのものではなく、地下の熱だけを利用すればいいという発想から生まれた発電システムです。巨大なパイプラインを地上から地下1000メートルあたりの場所まで通し、そこに水を流す。これによって、地熱で温められた熱水が蒸気となってパイプラインを上がり、地上にある発電所のタービンを回す。そして水蒸気が冷えた水はまた地下に循環させ地熱で温める……そういう仕組みです」

 これなら水源もいらないので、地下に温泉がなくても火山の多い日本なら理論上、どこでも発電所は設置できるという利点がある。ちなみに日本は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源大国だ。

「初期費用も比較的抑えやすく、規模も土地に合わせて調整できるので、どんな地域でも導入できます。日本はもともと温泉掘削や配管の技術があるので、その点ではかなり強い。火山列島ですから、地下の扱いに関する技術は他国より進んでいるんです」

 巨大な発電所から送電する従来の給電から、必要な場所で必要な電気を生み出す地産地消型エネルギーへ――。そんな未来図すら見えてくる。

「原油にも左右されにくいし、自然エネルギーなので安定供給にもつながる。そういう意味では、かなり期待できる技術です。だからこそ、日本の将来技術の一つとして、地熱発電が今、再評価されているんです」

 もう一つ、地熱発電とあわせて開発支援の拡充が決まったペロブスカイト太陽電池は、日本が発明した次世代型の太陽電池だ。

「要するに柔らかい太陽電池です。曲がるし、薄い。だから、窓に貼ったり、建物の角に沿わせたりと、さまざまな場所に設置できる。そういう意味ではとても面白い技術です」

 都市部のビルの壁面、駅や道路などのインフラ、これまで発電とは無縁だった空間が、電気を生み出す装置へ変わるかもしれない。まさに夢のある技術なのだが、

「既存の大規模発電をすべて置き換えるような主力電源として考えるのは、まだ早いと思います。また、耐久性にはまだ課題があり、当面は補助的な使い方が基本になるでしょう」

 ただ、この太陽光発電には、さらに壮大な計画も視野にある。それが、宇宙太陽光発電だ。

「宇宙で太陽光発電をして、それを電波に変えて地球に送るという構想です。宇宙なら24時間365日、天候に左右されずに発電できるので、地上での太陽光発電よりはるかに条件がいい。理屈の上では可能ですし、お金さえあればできる。もともとこの案を言い出したのはアメリカなんですが、アメリカが中断した中でも、日本は研究を続けてきました。

 その一つが、JAXAが作った世界初の宇宙ヨット『イカロス』だ。

「イカロスは太陽風を受けて進むための大きな帆を宇宙で広げる技術を実証したわけですが、JAXAとしては、大型の太陽電池パネルを宇宙で展開するための基礎技術を確かめたかったんだと思います。イカロスで使った膜の部分を太陽電池に置き換えれば、そのまま宇宙用の太陽電池パネルになる。宇宙でそれを何枚もつないでいけば、どんどん大型化できる」

 たとえば、1枚を10メートル、20メートル程度にして、それを何百枚も打ち上げれば、2キロ四方くらいの巨大な太陽電池パネルが作れる計算になる。

「そこまでの規模になれば、日本の電力需要のかなりの部分を支えられる可能性もある。もう完全なSFではなく、一部では現実の選択肢として見られ始めているんです」

 そこにもってこいなのが、ペロブスカイト太陽電池だと川口氏は言う。

「宇宙開発の技術はアメリカが上だと思いますが、太陽電池の発電技術は日本のほうが強い。だから、そこが組めば、世界の電力供給を日本が席巻する日が来るかもしれない」

 エネルギー問題が危機的な状況になりつつある今、こうした技術をどこまで実用化し、普及へつなげられるかが、今後の大きな焦点になりそうだ。

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 実用化が迫っている次世代型地熱発電とペロブスカイト太陽電池だが、さらなる“夢の発電”もある。その開発で世界をリードしているのは、日本が誇る“日の丸技術”だった。後編では、その詳細について解説する。

川口友万(かわぐち・ともかず)
1967年生まれ。サイエンスライター。富山大学理学部物理学科卒業後、出版社勤務を経て99年よりライターに。これまで科学情報サイト「サイエンスニュース」の編集統括や不定期でバー「科学実験酒場」を経営するなど、様々な角度から科学をテーマに活動している。著書に『ホントにすごい!日本の科学技術』(双葉社)、『ビタミンCは人類を救う!!』(学研パブリッシング)、『なんでも未来ずかん』(講談社)、『ラーメンを科学する』(カンゼン)など多数。