■トラックに積めるくらいのサイズの原子炉
その一方で、比較的現実味があるのが、小型モジュール炉(SMR)だ。従来の原発を小型化し、工場でつくった機器や部材を組み合わせて設置しやすくした次世代型の原子炉である。これが今、密かに注目を集めている。
「言ってみれば、原子力発電所の小型化です。世界中では今、車に載るくらい、トラックに積めるくらいのサイズの原子炉をつくろうとしているんです。小さいから空冷でも運用できるので、従来の原発のように海のそばで大量の冷却水を必要としません」
つまり、どこにでも設置が可能だということ。あちこちでつくれれば送電ケーブルを長く引く必要もなくなる。地域ごとに分散して置ける電源として使える点も見逃せない。
「今の原発のような何百万キロワット級に比べればかなり小さいですが、その代わり、どこにでも置ける。大都市全体をまかなうようなものではなく、街や地域、離島単位の電源として使える。公園や更地に置いて、地元の電気代を下げる使い方だってありえるでしょう」
では、こうした次世代エネルギーが実用化された先に、私たちの暮らしはどう変わるのか。見えてくる未来像は、さらに大きい。
「2050年くらいになれば、“電気代を払う”という感覚自体がなくなるかもしれない。道路のような社会インフラになるかもしれません。今日、明日でそうなるわけではありませんが、その方向には向かっていくはずです」
電気は、使えば使うほど料金を気にするもの――。そんな当たり前が、将来は過去の常識になるのかもしれない。
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前編では、経済産業省が開発支援の拡充を決定した次世代型地熱発電とペロブスカイト太陽電池の実現性と日本が世界をリードする理由を解説している。
川口友万(かわぐち・ともかず)
1967年生まれ。サイエンスライター。富山大学理学部物理学科卒業後、出版社勤務を経て99年よりライターに。これまで科学情報サイト「サイエンスニュース」の編集統括や不定期でバー「科学実験酒場」を経営するなど、様々な角度から科学をテーマに活動している。著書に『ホントにすごい!日本の科学技術』(双葉社)、『ビタミンCは人類を救う!!』(学研パブリッシング)、『なんでも未来ずかん』(講談社)、『ラーメンを科学する』(カンゼン)など多数。