「引き出し手数料が高すぎる」
「深夜に使えないのは不便」
などといった利用者から不満の声も大きい銀行のATM。もちろん、こうした不満は利用者が多いから漏れ聞こえてくるものなのだが、そのATMが街から静かに姿を消し始めている。
「銀行のATMは年々、その数を減らしています。全国銀行協会の決済統計年報によると、コンビニやゆうちょ銀行を除く銀行ATMの設置台数は2025年時点で8万2932台。10年前の2016年が約11万台だったので、25%ほど減少したことになります」(全国紙経済部記者)
利用者が多いのに減っていく一方なのは、なぜか――。そこには銀行側の“ある本音”が見え隠れする。
「銀行としては一刻も早く、この“鉄の箱”を捨て去りたいと考えているんだと思います。キャッシュレス化という名の“現金追放キャンペーン”に血眼になっているような感じなんでしょう」(前同)
その原因は何か。経済評論家の佐藤治彦氏に話を聞いてみた。(以下、「」内はすべて佐藤氏)
「ATMそのもの以前に、今は銀行の支店を減らしていく流れがあります」
近年、銀行業界ではメガバンクを中心に、支店数を減らすことが経営上の重要なテーマになっているのだという。合併が進んで支店が減れば、当然そこに置かれていたATMも減少していくことになるというわけだ。
「ATMって、実は“金食い虫”なんですよ。まずATMの機械にはお札が700枚とか1000枚程度しか入らない。だからセコムなどの警備会社が現金を回収したり、足りなくなれば補充したりを頻繁にする必要がある。それに加えて、メンテナンスの手間もけっこうかかるんです。設置場所の賃料や通信費だってかかります。現金という物理的なものを扱う以上、必ずコストが発生するんですね」
一般的な銀行ATMの本体価格は1台約300万円。さらに維持管理費は、1台につき月額約30万円かかるのだという。1日1万円を食い潰す計算だ。2018年の全国銀行協会の報告によれば、銀行業界全体では、ATMの維持に年間約2兆円もの経費が投じられていたとされる。
「顕著なのは、ゆうちょ銀行の硬貨の扱いでしょう。昔は財布や貯金箱に溜まった小銭を気軽に預けられたものですが、今は硬貨をATMで処理するだけで高い手数料を取られる。預ける際の手数料は硬貨1~25枚までが110円、26〜50枚で220円、51〜100枚で330円ですから。ちなみに払い戻しは1枚でも110円がかかります」
1円玉や10円玉を大量に入れると機械が故障することがあるし、小銭は重いので輸送費もかかる。金融機関としては、とにかく硬貨の扱いを減らしたいのである。
「みずほ銀行など、紙の通帳発行に手数料をかけるケースも増えてきました。要するにATMの問題だけじゃなくて、紙の明細や窓口対応も同じこと。銀行側からすればカネにならないことはしたくないんですよ。彼らだって商売でやっているわけですから」