■消えゆくATMにどう備える?

 とはいえ、日本はまだまだ現金社会。香典や祝儀、公共料金の支払い、地方の飲食店、個人系の商店、現金主義の格安スーパーなど“クレジットカードもPayPayも使えない”という事態に出くわす機会も多いのではないか。

「キャッシュレス化の話になると、必ずといっていいほど“日本は諸外国に比べて遅れている”という意見が出ますよね。でも、待っていただきたい。むしろ私は日本人が手元に現金を持っていることは健全だと思っています。PayPayもクレジットカードもシステムがダウンしたら終わりですよね。実際、わりと頻繁に決済システム障害は起きているわけですし。もし海外からハッキングがかかってシステムが使えなくなったら、日本経済そのものが止まってしまう。いずれにせよ、現金がバックアップとして重要なのは間違いありません」

 一方、キャッシュレス化は店舗側にとっても厄介な問題が生じる。決済のたびに2~5%の手数料を負担させられる羽目になり、最終的にそれらの金額はVISAやマスターといった海外ブランドの企業へと流れていく。利益率の低い中小商店にとって、その数%が生死を分けるのは想像に難くない。

「カード決済は手数料を取られるだけでなく、入金までの時間もかかる。だから資金繰りにも影響してくるんです。一方、大きな会社が従業員に現金を触らせないためにキャッシュレス化を進める流れも理解できる。お金に関する店員の不正やレジ打ちミスも生じますからね。つまり店によって事情が違うということなんです」

 スマホやカードの操作がおぼつかない高齢者だけではなく、若年層でも「自分がいくら使ったか把握しておきたいから、なるべく現金で払う」というポリシーの持ち主は少なくないだろう。こうした現金派にとって、銀行の都合でATMが街から消えていくのは大きな痛手だ。

 では、我々生活者はどうすればいいのか。

 佐藤氏は「残念ながらATMが消えていく流れは止められない」としたうえで、「無駄な手数料を払うことから見直すべき」と提案する。

「銀行の支店が全国的に減っているとはいえ、ある程度大きな街ならコンビニはある。24時間、コンビニATMで何回下ろしても手数料が無料の銀行を使うのはオススメですよ。具体的には住信SBIネット銀行、SBI新生銀行、セブン銀行などのコンビニATMは、条件付きの場合もありますが多くで手数料無料、また、ゆうちょ銀行は同行のATMなら土休日を含めて紙幣の出し入れは手数料無料です」

 月末になると駅中のATMに行列ができている光景をよく見かけるが、銀行系のATMが減っているからこそ、コンビニを活用するのは有効かもしれない。

 金融業界のみならず、政府も一体となってキャッシュレス化を推し進めているのは事実だが、なにも市民が無駄に踊らされる必要はないのだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)
1961年、東京生まれ。慶應大学商学部卒、東京大学社会情報研究所教育部修了。大学卒業後、約5年間、JPモルガン、チェースマンハッタン銀行で金融の最新ハイテク商品であるデリヴァティブを担当。東京、ロンドン、ニューヨークの3市場を経験する。退職後、金融誌記者、国連難民高等弁務官本部でのボランティア(湾岸戦争プロジェクト)などを経て独立。経営コンサルタントとして東証1部上場会社からベンチャー、中小企業まで事業戦略作成、人事労務、販売促進、広報、新規事業など課題の解決にもアドバイスを行う。テレビ、ラジオ、雑誌などでエコノミストとして経済とお金を解説するコメンテーターとしても活動中。近著に『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)。