■太平洋の"目"が見守る日本の空と海

 南鳥島は、気象観測の点でも重要な場所だ。気象庁の南鳥島気象観測所では、地上の天気だけでなく、上空の空気、大気の状態、日射、遠くで起きた津波なども観測している。

「南鳥島では毎日2回、大きな気球を空に飛ばしています。気球には小さな観測機器がついていて、上空の気温や湿度、風の向き、強さなどを調べるのです。太平洋の真ん中で集めたデータは、天気予報や台風の動きを見るうえでも役に立ちます」(気象予報士)

 地図の端っこにある小さな島だが、日本の空を見守る"大事な目"でもある。

「周囲に大都市も工場もないため、南鳥島は"きれいな空気"を測る場所としても貴重です。人間活動の影響を受けにくい、地球規模の空気を観測できます。さらに太平洋上の重要地点にあるため、遠地津波の観測にも関わります」(前同)

 歴史を見ても、南鳥島はなかなか興味深い。現在は一般住民のいない島だが、かつては人が暮らしていた。

 小笠原村の資料によれば、1902年には島の南側中央部に水谷村が作られ、同年8月には男29人、女25人、子供4人が確認されているという。

「当時、南鳥島で注目された資源は、海鳥のフン、いわゆるグアノです。肥料として価値があり、1920年代には大規模に採取されました。年間1000~3000トンもの鳥糞が採られていました」(島嶼史研究者)

 いまはレアアース、昔は鳥のフン。南鳥島は昔から"お宝の島"だったのである。

「現在は、海上自衛隊、気象庁、国土交通省関東地方整備局の施設が置かれ、各省庁の職員が駐在しています。設備改修を行う作業員などを除き、一般の人が訪れることはありません」(前出の全国紙社会部記者)

 では現在、その絶海の島で暮らしている人たちはどんな生活をしているのだろうか。防衛省海上自衛隊・海上幕僚監部に話を聞いた。

「海上自衛隊が飛行場などを運用しています。滑走路があり、航空機が発着できる施設がありますので、その運用や整備を行う隊員が常駐して、任務に当たっています。常駐している人数については、およそ20名です」

 小さな三角形の島に海自隊員が詰め、日本最東端の"空の玄関口"を守っているわけだ。食料や生活物資も、当然ながら簡単には届かない。

「定期的に往復している航空機に載せて空輸しています。輸送には、海上自衛隊が運用するC-130R輸送機を使っており、頻度は月1回程度です」(前同)

 滑走路の長さは1.3キロ。大型のジェット機の離発着は不可能だ。コンビニもスーパーもない島では、この空輸こそが命綱。水道、電気、通信などのインフラについても、

「南鳥島で任務に当たるために必要な環境は整えられていると考えていただいて大丈夫です」(同)
 日本の最東端で、今日も静かに国を支えているのが南鳥島なのだ。