■第1話でどれだけ視聴者をつかめるかが重要
今年7月期からの続編放送が決定している『VIVANT』は、架空の国・バルカ共和国と日本を舞台に自衛隊の影の諜報組織「別班」の一員である乃木憂助(堺)の活躍を描いた作品。放送前には、メインキャスト以外の情報が役名含めて一切明かされない異例の手法が取られていたが、放送後には視聴者を巻き込む“考察ドラマ”として社会現象級の大ヒットを記録した。
同作の原作・演出を手掛けた福澤克雄監督(62)は、『VIVANT』はあえて第1話では物語を動かさず、代わりに大規模な演出で視聴者を惹きつけたことをインタビューで明かしているが、視聴者目線では、核心に迫る“物語”が動いていないだけで、シナリオは目まぐるしく二転三転していたように思える。
『VIVANT』第1話の冒頭は“スーツ姿の主人公が砂漠で死にかけている”という、すぐに理解することは不可能ながら、あまりにもキャッチーな場面から始まった。そうなった経緯が紹介されてからも、謎の自爆テロや現地警察からの逃亡劇など、圧倒的なスケール感で視聴者を釘付けにし続け、“とんでもないドラマが始まったぞ”と印象付けることに成功した。
その後は一気に物語が加速。第4話までが“主人公が別班”という事実を伏せたまま進行する「誤送金編」、第5話からは主人公と敵組織の因縁などが少しずつ明らかとなる「宿命編」と、最後までスリリングなドラマが展開した。
『VIVANT』に限らず、日曜劇場はスピード感がありつつもどんでん返しが連続するシナリオ構成が人気を博すことが多く、今年1月期の鈴木亮平(43)主演『リブート』は第1章(第1話~6話)、第2章(第7・8話)、最終章(第9・10話)という構成。こちらは『VIVANT』ほどのスケール感はなかったが、スピード感は『VIVANT』以上なところがあり、多数の考察が飛び交った二転三転するキャラクターの描き方含めて、見ごたえのある場面が多い作品だった。
つまり、展開の速さや企画の鮮度をあげながら、キャラの魅力やドラマ全体の満足感という見応えは増やしていかないといけないわけだが――そうならなかった作品としては、25年10月期のフジテレビ系水10ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)』が挙げられるだろう。
『もしがく』は三谷幸喜氏(64)が脚本を手掛け、主演を菅田将暉(33)が務め、二階堂ふみ(31)、神木隆之介(32)、浜辺美波(25)、小池栄子(45)、坂東彌十郎(69)、小林薫(74)など、超豪華俳優陣が出演した作品。物語の舞台である“80年代の渋谷”を再現した巨大ロケセットを千葉県に設置するなど、かなりの予算をかけたフジテレビの“勝負作品”だったが、視聴率、そして配信の数字も振るわずに終わってしまった。
同作は、初回から20人以上のメインキャストが一気に登場する絵面の豪華さは話題となった反面、そのせいで初回はキャラクターの人物紹介だけで終わってしまい、各キャラの主役回が始まった時期にはすでに視聴者が離れてしまっていたと言われている。
同作と比べると今クールの『月夜行路』や『VIVANT』は、初回で最低限の人物紹介はしつつも意味深な伏線を多くちりばめるなど、初回からテンポ、スピード感を重視していた感じだ。
『月夜行路』には、
《何度見ても飽きさせない疲れさせないスピード感と細部に渡る新発見で楽しめました》
《ずっと観てられるテンポ感》
《凄いね、次々と展開していくねこのドラマ!!!飽きない!》
といった、同作の“スピード感”を評価する声が多く寄せられている。
連ドラでは、口コミが広がり話題になり始めた時点で、もうすぐそこに最終回が迫っていることも珍しくない。“低迷枠”で放送される『月夜行路』がTVerのお気に入り登録者数1位となっているのは、第1話から視聴者をつかみにいく、という“狙い”があったからだろう。
特撮・ドラマ・映画ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受け、平成ライダー、そして現在放送中の令和ライダーを筆頭に、特撮作品を愛するように。
特撮出身の俳優を追う過程で一般ドラマや映画の世界にも興味を抱くようになり、旬なドラマ・映画は欠かさずチェック。エキストラとして作品に参加し、阿部サダヲや藤原竜也など一流の俳優陣の生の芝居に衝撃を受けることもしばしば。“考察ドラマ”だらけの4月期ドラマに期待している。