日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代の時流を徹底解説。今回戸田氏が注目するのは、令和に復活する「社員旅行」についてだ。

 日本のビジネスシーンにおいて、長く「絶滅危惧種」扱いされてきた社内行事が、今まさに驚きの再評価を受けています。帝国データバンクが2025年11月に発表した「福利厚生に関する企業の実態調査」によれば、企業が今後新たに取り入れたい福利厚生のトップに「社員旅行の実施・補助」がランクイン。フレックスタイム制度と並び11.4%で首位を飾るという、予想外の結果となったのです。

 バブル崩壊後、実施率が3割弱まで落ち込み、若手社員からは「休日が潰れる」「気を遣う」と敬遠され続けてきたはずの行事が、なぜ令和の今、人材戦略の切り札として再浮上しているのでしょうか。

 その背景には、コロナ禍を経て浮き彫りになった圧倒的なコミュニケーション不足があるようです。リモートワークやオンライン会議が定着した一方で、雑談や偶発的な交流が消失。組織の結束力が弱まる中、対面でのやり取りを求める声が若手社長やベンチャー企業を中心に高まっています。

 しかし、求められているのは昭和・平成初期のような強制力のある「団体行動」ではありません。時代に合わせ、短時間・選択式・目的特化へと舵を切り、内容を「アップデート」させたことこそが、復権を後押しした大きな要因と言えそうです。

 実際、最近の社員旅行は近場かつ短時間で済ませる日帰り形式や、仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」など従業員への配慮が見られ、一部の調査では一度参加した人のうち「翌年もまた参加したい」と回答する割合が9割前後に達したというデータも。これまでは不要な制度の筆頭だったものが、一転して「行ってみれば意外と楽しい」場へと変化を遂げているようです。