旅行者が増えるゴールデンウィークに、成田空港ではどこか聞き慣れないアナウンスが流れていた。

「お客様の安全のため、電動スーツケースによる走行はお控えいただきますようお願いいたします」

 電動スーツケースとは、人を乗せて走ることができるスーツケースのこと。スーツケースとキックボードが合体したような見た目で、モーターとバッテリーを搭載して時速10キロ前後のスピードが出る。

 今年初め辺りからは多くの空港で使用禁止使用禁止となっている電動スーツケースだが、過去にはSNS上でこんな目撃情報も上がっていた。

《今、私の横を電動スーツケースに乗った人が通り過ぎてった》
《電動スーツケースって結構早いんだね》
《京都ってファンキーだよね。着物を着た外国人のおばあちゃんが電動スーツケース乗ってるんだもん》

 目撃情報によると、利用者の多くはアジア系の外国人とのこと。価格は家電量販店やネット通販で10万円前後と、一般人でも手が届く範囲だ。重い荷物を手で引かずに済むどころか、自分も乗って移動もできる。いわば”夢のスーツケース”とも言えるのだが、日本人が乗っている姿はほとんど見かけない。どうやら空港内だけのルールではないらしいのだ。

 自宅に常時30台以上のスーツケースを所有し、テレビ番組『マツコの知らない世界』(TBS系)にも出演したスーツケースの伝道師、佐藤宏樹氏は、こう話す。

「電動スーツケースは、日本国内では道路交通法上の『原動機付自転車(一般原付)』に分類されます。公道を走行するには運転免許や保険の加入、ナンバープレートの取得が必要です。しかし、電動スーツケースは保安基準を満たしておらず、実質的に公道を走ることは不可能です。これを無視して歩道などを走行した場合、無免許運転などに問われる可能性があります」

 実際、過去には電動スーツケースが摘発された事例がある。

「2024年6月、大阪で国内初の電動スーツケースの摘発がありました。電動スーツケースに乗って歩道を走行した中国籍の女子留学生が、道路交通法違反(無免許運転)の疑いで書類送検されています。本人は“中国のウェブサイトで購入した。乗り物と思っておらず、免許が必要だとは思っていなかった”と話していました」(全国紙社会部記者)

 前出の佐藤氏は、日本での使用はほぼ不可能だと思ったほうがいいと言う。

「空港、駅構内、大型商業施設、公園などは私有地であっても、道路とみなされる可能性が高いです。接触事故を防ぐ安全管理上の観点から、原則として電動スーツケースの走行が禁止されています。日本では自宅の敷地内くらいでしか使用できないでしょう」