■今やタワマンは“持っているだけで資産を削り続ける負債”に…
デベロッパーは、新築マンションを売る際に月々の支払いを安く見せたほうが売りやすいため、最初は積立金を極端に安く設定するケースが目立つという。その代わり、あとから徐々に値上げする“段階増額積立方式”を取るのだ。前出の榊氏は言う。
「タワマンって新築時は、とにかく“夢のある商品”として売られるんですよ。“眺望が抜群”、“ホテルみたいな共用施設がある”、“豊かな暮らし”みたいなイメージで。でも、その裏では長期的な維持費の問題がかなり軽く扱われている。そこが一番の問題なんです」
一般的なマンションの維持費は、管理費と修繕積立金を合わせて平米単価500〜600円くらいが目安とされる。だがタワマンの場合、これが1000円近くになってしまう。しかも今後は1500円レベルまで跳ね上がるという見方も多い。
「たとえば70平米の一般的ファミリータイプなら、維持費は月10万5000円。住宅ローンとは別に、それだけの固定費が毎月発生する計算になりますからね。賃貸をもう1部屋借りているようなものですよ」
今やタワマンは“持っているだけで資産を削り続ける負債”になっているということか。
「専門家の中には“修繕金が上がる10年以内に売り抜けろ”なんてアドバイスをする人もいます。でも、これは要するに“騙しのシステムにうまく乗っかりましょう”ということに他ならない。根本的な話として、タワマンというのは通常のマンションと比べて“金食い虫”ですからね」
これはタワマンの構造的な問題が絡んでくるという。一般的なマンションがコンクリート一体構造なのに対し、20階以上のタワマンの外壁にはALCパネルと呼ばれる素材が使われる。その継ぎ目を埋めるコーキング材は、15年前後で物理的寿命を迎えるのだ。
「そうなると硬化してひび割れ、水が侵入する。放置すれば中の鉄筋が錆びて爆裂し、建物は“砂上の楼閣“へと変わる。つまり15年に一度、必ずその無数にある継ぎ目をすべて打ち直さなければならないんです」
修繕費が膨らんでいく理由はそれだけではない。
「タワマンが多く建設されている湾岸エリアは潮風でコーキング材が傷みやすいから劣化が早い。30年経つとエレベーター交換の時期となりますが、今はエレベーター業界も部材供給の遅れで大混乱にあり、“10年待ち”とも言われている。しかも100メートルを超える超高層建築では、超高層用ゴンドラや特殊足場が必要となる。結果として、修繕費が通常マンションの2〜3倍になるんです」
こういった問題が明らかになってきたことで、“新築でないタワマンに価値なし”と見なす人が増えているという。これまでタワマン市場を支えてきた中国人投資家たちも、本国の経済状況や日中関係の悪化から一斉に売りに出そうとしているのだとか。
「今の実感としては“売りたい人3”に対して“買いたい人1”くらいですかね。富裕層や投資家はすでに撤退戦に動き出しています。不動産サイトに載っているような表面的な価格にはまだ表れていませんが、アンダーグラウンドの業者間価格ではかなり下がっている可能性が高い。一般人がニュースで“タワマン価格暴落”を知る頃には、もう売り抜けのタイミングは終わっているでしょう」
高度成長期に建設された全国の巨大団地が衰退化していったように、“富の象徴”であるタワマン幻想も崩壊してしまうのか。今まさに過渡期を迎えつつある。
榊淳司(さかき・あつし)
不動産ジャーナリスト、榊マンション市場研究所主宰。1962年、京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンションの資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供。『たけしのTVタックル』『羽鳥慎一モーニングショー」(ともにテレビ朝日系)など、テレビ・ラジオの出演多数。主な著書に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)『マンション格差』(講談社現代新書)など。早稲田大学オープンカレッジ講師。