■史実とフィクションの微妙なバランス
ドラマのバランスとしては尺が長めだったが、吉岡(慶)はただの美人ではない、複雑な感情を抱えた女性を演じさせると抜群。ただ、その熱演に気を取られていたが「実子を義父に取られていた」という設定は、文献では「与一郎は秀長と正室の実子」とされていることから、史実に手を入れすぎなのでは? と感じたのも確かだ。
本作は史実を大胆に改変するのが魅力だが、一方で5月3日放送の第17回で描かれた、市(宮﨑あおい/40)による浅井長政(中島歩/37)の介錯(かいしゃく)や、武田信玄(髙嶋政伸/59)の餅をノドに詰まらせての急死など、物語を優先した史実改変の描写には批判の声も少なくない。
今回も与一郎の設定については、《たとえ史実を変えて連れ子にするにしても、慶との問題を解決するのに年月がかかりすぎてると思った。しかもずっと取り組んでなくて、いきなりなのはなぁ。半兵衛と妻同士が姉妹設定なのだし、周りの誰からも慶に子がいることが耳に入らないのが不自然》などと、疑問の声が出ている。
史実にこだわらず、面白いエンタメを目指す意図はわかるが、多くの人が知る史実を変えすぎると、違和感を覚えてしまうのも事実。そのあたりのバランスは、難しいところなのだろう。これから、上杉謙信(工藤潤矢/55)軍が織田軍を撃破した「手取川の戦い」が起こるのだが、謙信も信玄同様にあっさりフェイドアウトしそうで心配だ。
また、次回は松永久秀(竹中直人/70)の謀反が描かれ、おなじみの火薬を用いた爆死の逸話がメインになるだろう。爆死自体はフィクションで、どれだけ派手に面白く見せられるか楽しみではあるが、あまりムチャな改変をすると、視聴者が一気に離れるかもしれない。最後まで支持を保てるか、次回が正念場だろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。