■アメ横に生まれた新たな秩序

 しかし、今回の警視庁による摘発は、無許可の路上営業や通行の妨げを問題視する形で行われた。現場では、どのような声が上がっているのだろうか。

「常連客の間からは、昔ながらの雑多な雰囲気が薄れることへの寂しさが聞こえてきました。一方、店舗側や地元関係者においては、通行の妨げや安全面への配慮から、一定のルール整備はやむをえないとする受け止め方があるのも事実です。今回の取り締まりは行政のはっきりとした方針がみられました。売上への懸念を抱きつつも、安全な環境づくりと営業の継続を両立させる道を模索している様子が見受けられます」(同) 

 一斉摘発によって、外飲みの風景は消滅してしまうのか――。そこで、実際に本サイト記者はアメ横を訪れてみることにした。

 向かったのは、6月上旬の週末の夜10時頃。閉店時間を過ぎた鮮魚店やお菓子店を通り抜けると、飲食店の明かりが目に入る。店先にはテーブルが並び、ビールジョッキを傾ける客の姿がある。料理の匂いが通りを漂い、店員の威勢のいい声も飛んでいた。

《アメ横で摘発あったっていうけど、なんか変わった?》

 と、あるXユーザーが指摘するように、一見、路上営業はこれまで通りに行われていた。だが、以前とまったく同じというわけではないらしい。人が多くて歩きにくい瞬間はあっても、店のテーブルや椅子が邪魔で歩きにくいということはなかった。

 よく見ると、店前の道路上にはオレンジ色の線が引かれていた。これについて別のXユーザーが、

《オレンジの線より道路にはみ出すとNGという決まりがあるらしい》

と指摘する。実際、多くの店でオレンジ色の線の内側にテーブルが収められているように見え、通りには一定の一体感が生まれていた。

 ただ、この線が法的な境界線なのか、商店街側などによる目安なのかについて、関係先から明確な回答を得ることはできなかった。今後のアメ横の路上営業について、塩見氏はこう予想する。

「完全に消滅するのではなく、法規や商店街のルールの範囲内に収まる形へ変化していくと予想しております。すでに一部の店舗では、敷地内に客席を収める工夫や、立ち飲みスペースの明確な区切りを設ける動きが始まっています。アメ横特有の活気は残しつつも、歩行者の安全や衛生面をクリアした新たなスタイルの外飲みが定着していくはずです」

 もちろん、路上営業をめぐる問題がなくなったわけではない。オレンジ色の線の内側に収まっていれば問題ない、という単純な話でもないだろう。だが、少なくとも現地では変化の兆しを感じた。アメ横は今、その過渡期にあるのかもしれない。

「酒場文化は時代とともに形を変えて生き残ってきた歴史を持ちます。アメ横の飲食店街もまた、現在の課題を乗り越え、独自の魅力をアップデートしていくと期待しております」(前同)

 知り合い同士で飲む席もあれば、どうやら、知らない者同士が意気投合した席もある。アメ横で酒を飲む人々を眺めていると、彼らの顔は一様に明るい。その明るい表情を見る限り、アメ横の外飲み文化は、そう簡単には終わらないのかもしれない。

塩見なゆ(しおみ・なゆ)
酒場案内人。酒場めぐりマガジン『Syupo』を運営し、これまで訪れた酒場は1万軒以上。大手メーカーで製品開発や、企画・広報を経て2016年に独立。テレビ東京『TVチャンピオン極 大衆酒場・せんべろ選手権』での優勝や、TBS『マツコの知らない世界』への度重なる出演など、確かな知識と経験を活かして酒場の楽しさを発信中。