日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回戸田氏が注目したのは、ジビエ料理。若者の間で広がる新たな食の流行に迫る!
近年、野生鳥獣の肉である「ジビエ」に対する注目度がじわじわと高まっています。背景にあるのは、野生動物による深刻な農作物被害と、それを有効活用しようとする動きです。加えて、食料自給率の向上やフードロス削減への関心の高まりもこの流れを後押ししています。
実際、農林水産省が発表したデータによれば、令和5年度における野生鳥獣による全国の農作物被害額は164億円に達しており、農業者の意欲減退を招くなど社会問題化。生息域の拡大に伴い、個体数調整が国主導で推進されるなか、捕獲されたシカ約75万5700頭、イノシシ約48万9000頭のうち、ジビエとして食肉利用されたのは16万1035頭で、全体で見ると食肉利用されたのは12.9%にとどまるのが現状です。それでも令和2年度の約9%に比べれば利用率は増加傾向にあり、捕獲個体を加工・流通させる取り組みが少しずつ実を結び始めました。
食肉としての流通が広がるにつれて、回収した個体を地域の食資源に変える試みがSDGsの観点から賛同を集め、サステナブルな活動として受け入れられています。特に健康志向や環境意識が高い若者の間では、高タンパク・低脂肪で鉄分が豊富なシカ肉などを体づくりのための食事に取り入れる人や、倫理的な観点からジビエを選ぶ傾向も出ているようです。飲食店や専門店による商品開発の進展も相まって、身近な食材としての認知度が上昇。全国各自治体が衛生管理基準を厳格化した処理施設を整備したことで、新鮮で安全な肉が安定して供給される環境も整ってきました。その結果、コク深く甘みを持つイノシシの脂身や動物性油脂を料理の旨味として再評価する動きも加速しています。