6月、子供たちがプールバッグを抱えて登校する――。そんな日本の夏の風物詩が、今、静かに消えようとしている。
原因は、年々凶暴さを増す猛暑。2025年夏の日本の平均気温は平年より2.36度高く、統計開始以降で最も暑い夏となった。
「屋外プールは涼しそうに見えても、直射日光や水温上昇、プールサイドの照り返しで熱中症リスクが高く、従来通りの水泳授業は難しくなってしまうでしょう」(スポーツインストラクター)
教育評論家の親野智可等氏は、学校現場で起きている変化をこう指摘する。
「以前に比べて、学校でプールに入る機会は明らかに減っています。地域や学校によっては、1回もプールに入れなかったというケースもあると聞きます。そうした状況が続けば、水に慣れる機会そのものが少なくなり、泳げない子どもが増えていく可能性があります」
プールの授業が減った原因は猛暑だけではない。学校施設の老朽化も深刻だ。
文科省によると、公立小中学校施設の約6割が築40年以上で、そのうち7割以上が改修を要するという。“寿命”を迎えつつあるのは校舎に限らず、学校プールも然りだ。
さらに、プールは教員にとっても重い負担になっている。授業時間だけ見守ればいい、という話ではない。子供たちが水に入る前から、すでに仕事は始まっている。
「毎朝、塩素濃度や水質、水温を測り、“今日は水泳の授業ができるのか”を判断します。体育主任も通常の授業や担任業務を抱えていますから、そこにプール管理が加わる負担は大きい。教員不足の今、夏場のプール管理は現場にとってかなり重い仕事になっているんです」(前同)
猛暑、老朽化、教員不足――。三重苦にあえぐ学校プールをどうするのか。その答えの一つとして動き出したのが、東京都大田区だ。
大田区教育委員会は今年4月、『大田区学校プールのあり方』を公表。既存の屋外プールには令和8年度から3か年で、簡易日よけを整備しつつ、民間・区営プールの利用や、屋内温水プールを整備して周辺校と共有する「プールシェア」を進める方針を示した。