■メリット多いプールシェアには問題点も
大田区教育委員会事務局施設担当課長の小野澤行平氏は、その狙いをこう語る。
「屋内の温水プールであれば、猛暑や雨の影響を受けにくく、計画的に水泳指導を行うことができます。施設を運営するインストラクターの方などにも補助として入っていただくことで、先生方と連携しながら、より効果的な水泳指導につながると考えています」
今や、水泳の授業は学校だけで抱え込む時代ではない。地域の施設を使い、専門人材の力も借りる。プールシェアは、猛暑時代の水泳授業を守るための新たな一手なのだ。
とはいえ、外部プールを使えば万事解決というほど単純ではない。最大の壁の一つが、児童・生徒の移動である。
「歩いて行くとなれば、暑い中を移動することになりますから、熱中症や紫外線のリスクが高まります。道路を歩く以上、交通安全の面でも注意が必要です。バスで移動するにしても、費用や乗り降りの安全管理が必要になります」(前出の親野氏)
こうした懸念に対し、大田区も安全確保を重視している。
「移動距離は、1キロという数字を目安として示していますが、小学校低学年であれば片道20分ほどかかることもあるでしょう。移動時の安全面については、見守り員のような方をつけることも考えています。そうした体制を整え、より安全に移動できるよう努めていくことも、今後の考え方の一つです」(前出の小野澤氏)
そして、より大きいのが地域差だ。都市部なら民間プールや公営プールが近くにあるかもしれないが、地方ではそうはいかない。使える施設がある地域と、ない地域。財政に余裕がある自治体と、そうでない自治体。その差が、そのまま子供たちの水泳授業の差になりかねない。
「本当に良い形で広げていくには、子供たちが住む地域によって差が出ないようにしなければなりません。自治体の財政力だけに任せるのではなく、国が環境整備を支援し、どの地域の子どもにも最低限必要な水泳指導を保障することが重要です」(親野氏)
それでも、水泳授業を続けるための現実的な選択肢として、プールシェアへの期待は大きいだろう。授業を安定して続け、安全面や指導面を補う仕組みとして、今後の水泳授業の一つのスタンダードになっていくのではないかと、親野氏は言う。
猛暑時代の水泳授業は今、大きな転換点を迎えている。
親野智可等(おやの・ちから)
教育評論家。公立小学校での23年間の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案している。『親の言葉100』『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。