■値上がりの理由と“狙い目”作品

──では、いったいなぜ今“過熱”しているのでしょうか。

「複合的な要因がありますが、一番は海外インフルエンサーの影響でしょう。影響力のある人物が初版漫画を買い、SNSなどで発信したことで、多くの人が追従し始めました。これはある種の投機的な側面が強く、インフルエンサーの発言一つで相場が大きく動く様子は、FXや仮想通貨に似ています。

 あとは、コロナ禍の時期にNetflixなどの動画配信サービスを通じて、海外で日本の漫画やアニメコンテンツの認知度が爆発的に上がったという背景があります。そこにインフルエンサーによる“コレクションの誇示”や投機熱が結びつき、海外マネーが一気に流れ込みました」

──何か外国人を熱狂させる要素はあるんですか?

「日本人と外国人では『初版』に対する価値観や文化が異なります。例えば、日本人の初版コレクターは“後々の版で修正される前の誤植を確認したい”などといった、一種の探求心から初版を好む人が多かったのです。一方、海外のコレクターは漫画を特殊なケースに入れて部屋に飾るなど、一種の美術品やグッズのような感覚で捉えていると感じます」

──メルカリのような手軽に取引できるプラットフォームが普及したことも、市場価格に影響を与えているのでしょうか。

「メルカリの影響はそこまで大きくないでしょう。あれは一般の国内ユーザーが中心で、海外のハイエンドなコレクターはほとんど使っていません。大きな影響力を持っているのは、海外向けのオークションや、国内であれば『まんだらけ』のオークションです。ちょうど先日に発売された、まんだらけのオークションカタログ『まんだらけZENBU』の最新号にも、『ドラゴンボール』1巻の初版が25万円スタート、『ONE PIECE』1巻の初版が25万円スタートなどと掲載されています」

──メルカリでも数十万~数百万で取引されている初版本がありますが、外国人ユーザーが少ない中でもこれだけ高値なのはなぜなのでしょうか。

「メルカリやヤフオクの購入者の中には、海外の人の依頼を受けて購入する、いわゆる“購入代行業者”がいます。外国人がそういった業者を通して購入しているため、高い値段で売れています。ただ、メルカリなどはあくまでもメインの購入ルートではないという印象です。状態なども詳しく確認できないため、シビアなコレクターは買いません」

──この過熱ぶりや高騰は、今後どこまで続くのでしょう。

「正直、これは誰にも読めません。ただ一つ言えるのは、現在どの出版社も電子書籍が主流になっていますが、これが普及すればするほど、逆に紙の本に対する魅力やプレミアム価値は高まるということです。

 デジタル化が進むからこそ、マニアは“物質としての所有欲”や“紙へのノスタルジー”を強く求めるようになります。各出版社が装丁の豪華なマニア向け愛蔵版を出すのもその表れですし、現在の初版高騰はその前兆かもしれません」

 家の本棚や押し入れを漁れば、とんでもないお宝が眠っているかもしれない。

山内貴範
1985年、秋田県出身。『サライ』『トランヴェール』『ムー』など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。