日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。6月7日の安田記念ではシックスペンスに騎乗予定の、彼のここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。
(※騎乗予定だったアドマイヤズームは、爪の不安で出走を取りやめました)

(以下の内容は2026年6月1日に寄稿されたものです)

 母・シンハライトとの親子制覇に挑んだアランカールとのオークスは8着。

 ダート1300メートルの条件で行われた東京3R・3歳未勝利戦で、エビちゃん(蛯名正義調教師)が管理するアイムインディで勝利を収め、いい流れに乗って一発を狙いましたが、勝ち負けにはなりませんでした。

 このレースを制したのは、ジュウリョクピエロとのコンビで挑んだ、デビュー5年目の今村聖奈騎手です。

 アランカール同様、勝てるチャンスはあるだろうと思ってはいましたが、一発勝負できっちりとモノにしたのはアッパレです。

 ひとりのジョッキーとしては、勝てなかった悔しさが当然あります。でも、騎手仲間としては、苦しんできた姿を見てきていただけに、素直に“おめでとう!”という言葉を贈りたいと思います。

 そして、もうひとつ。競馬サークルの一員であり、日本騎手クラブの会長としては、女性ジョッキーのGI制覇という意義のある勝利に、競馬界の未来を感じています。

 細江純子さん、牧原由貴子さん、田村真来さんの3人が、JRA初の女性ジョッキーとしてデビューしたのは、僕のデビュー9年目、エアグルーヴでオークス、ダンスインザダークで菊花賞を勝った1996年。

 当時の競馬界は完全な男社会でしたから、勝った、負けたという勝負以外のところで、人には言えない苦労をされてきたと思います。

 あれから30年。競馬場に女性ジョッキーがいるのは当たり前になりましたが、全体として見ればまだまだ少ないし、もっと活躍できる環境を整えていかなければいけないと思っています。

 今村騎手のクラシック制覇はその第一歩。ここからがスタートです。

「今村聖奈騎手とジュウリョクピエロを見て、私もジョッキーになろうと思いました」

 5年後、10年後……そう言って胸を張る女性ジョッキーが活躍できる場を作ることが、競馬界全体としての使命だと思っています。